2013年 1月 の投稿一覧

再発を防止するために生活の上で大切なこと

生活習慣をあらためる

心臓病があると、爆弾を抱えたような思いでいる人も多いことでしょう。無理もありません。しかし、病気の知識を持ち必要な注意を守れば、必ずしも病気を恐れることはありません。
必要以上に心配したり運動を制限すると、それだけで寿命が縮まることもわかっています。
過剰なストレスも心臓に大きな影響があるということです。
心身ともに負担がかかり過ぎない生活を心がけますが、それは心臓病を持たない人にも通じる生活の基本です。必要な診察と検査を受け、自分の状態に合ったペースを築きましょう。仕事や家事への復帰は主治医と相談し、心臓の回復の程度に合わせ、少しずつペースを戻していきましょう。残業が多かったり、肉体労働がきつい場合は会社と相談することも必要でしょう。

心臓に負担がかからない生活とは?

  • 入浴
  • 熱い湯に長時問入るのは、心臓への負担が大きくなります。浴室と更衣室を十分に温め、胸から上を出した半身浴がおすすめです。できるだけ家族がいる時間帯に入浴するのが安心です。

  • 気温・天候
  • 急激な寒暖差は心臓に負担をかけます。冷たい外気に触れるときは、急激に飛び出さず、ゆっくりスタートします。
    冬や天候の不順な季節は、脱ぎ着が簡単な重ね着をしたり、マフラー、手袋、帽子などを活用するとよいでしょう。強い日差しや高温もできるだけ避けましょう。

  • 水分補給
  • 運動の前後、入浴後、起床後は、水分の補給を忘れずに行いましょう。とくに長時間、水分をとらない状態が続く起床後は、コップ1杯のの水分補給が重要です。心不全やその傾向がある人では水分制限が必要な場合があります。具体的には主治医の指示に従います。

  • 便秘を防ぐ
  • いきみは血圧の上昇を招きます。便秘を防ぐ意味でも水分補給は大切です。不足がちな食物繊維を十分にとり、用便のリズムを整えることも大切です。適切な運動量を行うことは腸の動きを活発にし、便秘予防に役立ちます。
    便秘を解消しよう!」というサイトが参考になります。

  • 睡眠
  • 昼間の活動で多少疲れたり緊張が続いても、睡眠を十分にとることができれば、体力は回復しますし、精神的なストレスも軽減されます。忙しいときほど、睡眠時間を確保しましょう。クラシック音楽やゆったりした音楽を就寝前に聞くとリラックスし、よく眠れます。「心地よい音楽で快眠を」では、リラックス出来る音楽などを紹介しているサイトですがおすすめです。

心臓病の治療に使用される薬

ひとつの薬でも多種多様な効果をもたらす

心臓病の治療で処方される薬は、多種多様です。発作の予防薬として使う薬もありますし、現在の症状を軽くする薬、心臓の負担を軽くする薬、あるいは心臓の働きを強める薬もあります。
また虚血性心臓病の下地となつている高脂血症や高血圧に対する薬も処方されます。これから心臓病で処方されるおもな薬を説明しますが、なかには1つの薬でいくつもの作用を持つものがあり、同じ薬でも病状によって使う目的が異なる場合があります。また、症状が同じようでも、患者さんによって違う薬が処方されることもあります。医師が処方する薬は、その時点での患者さんの状態に合わせた、オーダーメードの治療薬です。治療効果を上げるには、薬の目的を理解し、指示どおりに使うことが大切です。

心臓機能の低下に対する薬の処方が変わってきている

ここ10数年で劇的に変わってきたのは、心筋梗塞や心不全で弱ってしまった心臓に対する対応の方法です。
以前は、心機能が低下しても相変わらず心臓を同じペースで働かせるために、心臓をムチ打ったり血管を広げて重荷を減らす治療が主流でした。最近は、心機能を維持するシステムが解明されてきたこともあり、そのシステムに働きかけて、弱った心臓が能力以上に働かなくてすむような、心臓を保護する薬の使い方もされるようになりました。その結果、機能が低下した心臓でも長く生きられる例が増えています。
また、虚血性心臓病の危険因子である高脂血症に対する治療薬は、選択肢が増えるとともに、発作を防ぐ効果が高いものが開発されています。
最近は、日本でも治療効果について大規模臨床試験が行われるようになりました。アスピリンの効果が認められたのも、そうした動きの1つです。

抗血小板薬

心筋梗塞や不安定狭心症などは、動脈の中にできた血栓によって引き起こされる例が多く、血栓ができるのを防げれば、心筋梗塞や不安定狭心症が起こりにくくなるのではないかと考えられています。
アスピリンは解熱頭痛薬として広く知られていますが、血小板凝集作用のあるトロンボキサン如という物質の生成を妨げる働きもあります。血小板は血管内で破れたアテロームのかさぶた役をして、血管を狭くする片棒をかついでいます。アスピリンを使えば、血小板が集まりにくくなり、血管が詰まるのを防げるのではないか、ということで心筋梗塞では再発予防の目的でアスピリンを使います。アスピリンは心筋梗塞になったことのない人に対しても、予防薬として使えるのではないかともいわれています。とくに虚血性心臓病の危険因子を数多く持つ人では、その発症を防げる可能性が考えられています。
副作用は、胃腸障害、出血傾向が挙げられています。抜歯などの手術を受けるときは、1週間くらい前から服用を中止します。また、ぜんそくの人では、ぜんそくの発作を誘発することがあります。

抗凝固薬

ワーファリンは血液を固まりにくくする薬です。心房柵動がある場合は、心臓内に血液がよどんで血栓を作ることがあり、その血栓が血流に乗って脳の細い動脈に達すると、脳の血管をふさぐ脳塞栓を引き起こすことがあります。
ワーファリンは、この血栓の形成を予防するために服用します。服用量は、患者さんの血液の固まりやすさによって異なります。多すぎると出血しやすくなり、止血しにくくなりますから、定期的に血液の固まりやすさを検査して服用量を決定します。出血しやすくなつたり、尿の色が赤っぼい、月経量が増えた、内出血しやすいというときは、医師に連絡してください。

硝酸薬

硝酸薬は血管を拡張して、発作を鎮めたり、予防する薬です。ニトログリセリンが有名です。ニトログリセリンの舌下錠は飲み込んでしまうと、肝臓で代謝されて効果がなくなります。このため、舌の下で溶かすか噴霧により、舌の静脈や口腔粘膜から直接吸収させます。舌下錠や噴霧剤は即効性がありますが、効果が長続きしません。
このため、発作の予防には持続性の硝酸薬が使われます。ニトロールR 、フランドールは、数時間以上効果が続きます。モルシドミン、アイトロールは、飲み込んでも肝臓で代謝されずに効果が持続します。ニトログリセリンや硝酸イソソルビドでは、内服薬、スプレー、貼付錠、テープがあります。

強心薬

ジギタリスという植物の葉は古くから心不全の治療に用いられていました。直接、心臓に作用して収縮力を増大させます。現在は合成したものが、さまざまな心臓病に使われています。治療に必要な血中濃度と副作用が出る血中濃度が近いため、ときどき血中濃度を測り直しながら使います。

アンジオテンシン変換酵素阻害薬

アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE) 阻害薬は降庄薬として使われてきました。血管平滑筋を収縮させ血圧を上昇させるレニンーアンジオテンシン系ホルモンの昇庄機構のほうを遮断するほか、キニンーカリクレイン系という降庄機構を促進することで、血圧を下げる役割を果たします。

アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬

アンジオテンシンⅡ受容体拮抗(ARB)薬は、レニンーアンジオテンシン系でアンジオテンシン変換酵素によって作られたアンジオテンシンⅡが血管収縮作用や動脈硬化作用、心筋肥大作用に働く受容体と結合するのを妨げます。これにより降圧薬、抗動脈硬化薬、そして心不全の治療薬としての効果を上げることができます。AC E阻害薬に比べ、副作用のからせきがないのが特徴です。

交感神経遮断薬

心臓と血管は、自律神経とホルモンなどの神経体液因子によって、その機能のバランスが保たれています。交感神経は、心臓では心拍数を速くし、心収縮力を強め、房室結節の伝導時問を短縮し、血管を緊張させます。ベータ遮断薬は、この交感神経のベータ受容体を遮断することで、心拍量を減らし血圧を下げます。

利尿薬、カルシウム拮抗薬、抗不整脈薬、抗高脂血症薬などが処方されます。

何が何でも禁煙

ニコチン=動脈硬化の原因に

狭心症や心筋梗塞など虚血性心臓病にとって、喫煙は絶対に避けなければなりません。たばこの煙には、ニコチン、一酸化炭素、タールなど数多くの有害物質が含まれています。
たとえば、ニコチンは体内でカテコラミンというホルモンの分泌を促します。カテコラミンには交感神経系を刺激する作用があります。これにより心拍数が増えたり、末梢の血管の収縮、血圧の上昇などが起こり、狭心症に結びつきます。
カテコラミンには血小板の凝集を進める作用もあり、血管を詰まりやすくします。また、肝臓に働きかけてコレステロールや中性脂肪の合成を促進し、善玉のHDL コレステロールを低下させる作用もあります。

有害ガスは体内で活性酸素を増加させる

虚血性心臓病の原因となる動脈硬化は、血管内によどんでいるコレステロールが酸化などの作用によって変性し、プラークを作ることで進行します。
たばこの煙に含まれる有害ガスは、体内で活性酸素を増やしてコレステロールの酸化を促したり、血管壁にある内皮細胞を傷つけ、動脈硬化を促進するのではないかとされています。さらに一酸化炭素は赤血球と結びつき、体内への酸素の取り込みを低下させるといわれています。
たばこを吸っている患者さんの急性心筋梗塞後の死亡率は、吸っていない患者さんの2倍に達することもわかっています。また、たばこはβ遮断薬の抗虚血作用を低下させるとの報告もあります。
喫煙は、心臓病の患者さんにとって最大の敵といっても過言ではありません。

受動喫煙が心筋梗塞の原因になることも

さらに最近は、副流煙を吸い込む受動喫煙が大きな社会問題になっています。自分がたばこを吸っていなくても、長年、たばこを吸っている人のそばにいる女性は、心筋梗塞の発症率が、そうでない人の2倍近くになるというデータがあります。
受動喫煙者では、LDLコレステロールが増え、善玉のHDLコレステロールが減る傾向にあり、血液が固まりやすく、少したばこを吸っている人なみに動脈硬化が進むこともわかっています。禁煙は患者さん本人のためだけでなく、周囲の人の健康のためにも欠かせないことです。節煙ではなく断煙ですぱっとタバコをやめることが大切です。