いい運動 よくない運動

心臓のためには良い運動と良くない運動があるのをご存じでしょうか。心臓に持病がある場合でも、適切な運動を取り入れることで心臓への負担を減らすことが可能です。

高血圧や脂質異常症(高脂血症)に対する運動の効果

運動不足は生活習慣病をはじめ、動脈硬化や虚血性心臓病の大きな原因の1つです。予防と治療の両面で運動は欠かせません。

適切な運動を継続すると、2型糖尿病や肥満などで低下したインスリンの感受性が改善されます。高血圧の方の場合、軽い運動によって血管を収縮させるホルモンが減少し、反対に血管を拡張させる物質が増えるため、血圧が安定しやすくなります。運動開始から2〜4週間ほどで血圧の低下が認められる傾向があります。

さらに、運動は心筋梗塞などの発症に関与する精神的ストレスの解消にも有効です。気分転換が必要なときに体を動かすことが効果的である点は、多くの方が経験されている通りです。

運動が禁止・制限されるケース(事前相談の必須性)

運動に多くのメリットがあるとはいえ、全員がすぐに運動を始めてよいわけではありません。運動を開始する前には、心肺運動負荷試験などの検査を受け、主治医へ相談することが前提となります。運動が可能と判断された場合は「運動処方」の指示に従って実施します。

特に高齢者や持病がある方の運動強度については個別のアドバイスが必要となります。(※関連情報:心臓弁膜症の高齢者の運動目安について)

疲労をためずに続けられる有酸素運動の特徴

運動の種類としては、多くの筋肉群を使う律動運動(ダイナミック・エクササイズ)を有酸素運動のレベルで行うことが推奨されます。有酸素運動(持久性運動)とは、疲労物質である乳酸が溜まらず、無理なく続けられる強度の運動を指します。

大切なのは運動の種目そのものよりも「強さ(ペース)」です。たとえばウォーキングであっても、速度が速すぎると無酸素運動になってしまいます。有酸素運動の目安は最大運動能力の約半分であり、30分運動して息切れするような状態は強すぎると言えます。有酸素運動の上限となる嫌気性代謝閾値(AT)は心肺運動負荷試験で測定可能です。(※あわせて読みたい:心臓に負担をかけない有酸素運動の具体的な選び方と実践ポイント)

ジョギング
健康維持に好まれる運動ですが、日常的にトレーニングを行っていない多くの方にとっては強度が高くなりやすく、有酸素運動の範囲を超えてしまう場合があります。
散歩(犬の散歩など)
犬を連れて歩くとペースを相手に合わせる必要が生じ、自分のペースを保てず無酸素運動状態になることがあります。散歩は自分のペースで行うことが大切です。
ゴルフ
ハイキングと並び、心臓のトラブルが発生しやすいスポーツの代表例です。対象となる年齢層に心臓病のリスクを抱える人が多いことに加え、同伴者への気遣い、ショット時の緊張、天候や起伏の激しさ、途中で体調が悪くなってもやめづらい環境などが影響します。
水泳
水に浮くことで負担が減る一方、心臓病の方には3つの懸念があります。1つ目は水面が心臓より上になると肺動脈圧が上がり心臓の負担が増える点、2つ目は水温が低い場合に自律神経が乱れて不整脈や血圧上昇を引き起こす点、3つ目は泳ぎの技術がないとペースを遅くできず無酸素運動になりやすい点です。室温・水温が管理されたプールで、ゆっくり泳ぎ続けられる技術がある場合を除き、事前に主治医への確認が必要です。

筋力トレーニングを行う際の条件

適度な負荷をかける筋力トレーニングは、筋力維持や健康増進に有用であり、心臓病の方でも実施可能です。ただし、スポーツジムなどのマシンを利用する場合は自己流で行わず、事前チェックを受けた上で心臓リハビリテーション指導士や専門知識を持つ理学療法士の指導のもとで安全な強度を設定する必要があります。

準備運動(ウォームアップ)と整理運動(クールダウン)

運動の前後にはストレッチや軽い柔軟体操を行い、心臓への急激な負荷を防ぐことが重要です。ウォーキングを行う際もゆっくりしたペースから少しずつ速度を上げ、終わるときも徐々にペースを落とします。

運動中は呼吸が増えますが、不快に感じたり、会話が困難になったり、休憩後5分以上経過しても呼吸が整わない状態になる場合は強度が過剰です。安全な範囲内に留めるよう調整してください。