2013年 1月 の投稿一覧

運動は再発予防に効果的

リハビリは退院後も必要

心筋梗塞などのあとには、心機能と身体機能の回復、社会復帰をめざし、再発を防ぐための心臓リハビリテーションを行います。心臓リハビリテーションのメインは、運動療法ですが、同時に病気の知識や薬の服用法、食事、生活での注意、応急処置、仕事のしかた、カウンセリングなども行われます。
いずれも医師、看護師、栄養士、健康運動指導士などが専門的な立場から指導します。最近は日本心臓リハビリテーション学会の認定試験にパスした心臓リハビリテーション指導士がいる施設もあります。心臓リハビリテーション指導士は、心臓病やその道動療法、運動生理学に十分な知識と経験を持つ人に与えられる資格です。

心臓リハビリにより死亡率が低下

心臓リハビリテーションは、さまざまな効果が証明されていますが、なかでも特筆すべきは、リハビリテーションプログラムに参加した患者さんを三年間追跡調査したところ、心血管系による死亡率が20~25%も減少していることです。
これは心筋梗塞に対するβ遮断薬療法や心不全に対するアンジオテンシン変換酵素阻害薬療法の効果と同等であるとされています。運動療法単独でも、心血管系による死亡率は約15%低下しています。

心臓リハビリは半年間保険適用

心臓リハビリテーションは、↓般に入院中の急性期(1140ページ)、退院後の回復期、維持期の三段階に分かれます。
現在、心臓リハビリテーションは、施設認定を受けている医療機関で行うと、発症から6ヶ月間、健康保険の適用を受けられまま安全にしかも効率的にリハビリテーションを行うには、退院後もできるだけ、こうした施設に通院して指導を受けることをお勧めしま宅施設では、医学的管理のもとに、前述の心臓リハビリテーション指導士による指導が受けられます。
運動の種類、強度、時間、回数などの運動処方は、運動負荷試験の結果によって作成されます。大きな筋肉を使う律動的な運動を、AT以下の無理のないレベルで行います。エルゴメータやトレッドミル、ウォーキング、軽いエアロビクスなどが中心で、メニューは患者さんごとに異なります。最近は機械を使った軽い筋力トレーニング(レジスタンス運動) なども取り入れられています。ストレッチング、体操などの準備運動(ウォームア
ップ) と整理運動(クールダウン) も行います。

運動を行う際の注意

運動は、低いレベルから開始し、徐々にレベルを上げていきます。はじめは弱い運動強度で、少しずつからだを慣らしていきます。リハビリをはじめた当初は、急速に運動能力が回復しますが、一定のレベルに達すると、目に見える効果が現れにくくなります。そのときにがんばり過ぎると、逆効果です。「楽~ややつらい」と感じる程度を維持することが大切です。運動施設に通えず、自分で運動を行う場合も、専門医の指導を受け、定期的に運動負荷試験などの医学的検査を受けることが大切です。
自分の運動能力と限界を把握し、次のような注意を守って安全に長続きさせてください。

虚血性心臓病の再発を防ぐ大切な3つのポイント

再発予防には運動と禁煙

狭心症や心筋梗塞の発作が治まり急性期を脱したら、再発を防ぐための治療をはじめることが必要です。
日本では、心筋梗塞の二次予防(再発予防) として、左表のようなガイドラインが提言されています。その基本は、発作を引き起こす誘因を一つでも減らすことにあり、いくつかの治療法を組み合わせて行うことになります。治療法のうち、どのような病状に対しても実施すべきとされているのは、3つです。

  1. 適切な運動
  2. 禁煙
  3. アスピリンの服用

薬は症状に合わせて使い分ける

さらに病状に合わせて、食事療法などの生活習慣改善を行い、アンジオテンシン変換酵素阻害薬やβ遮断薬、抗高脂血症薬、抗凝固薬、硝酸薬などの薬や植え込み型除細動器を使います。
二次予防は、重症の心不全や不整脈、心臓死を防ぐ治療でもあり、病気からの回復を進める治療にもなります。とくに運動と禁煙は単なる生活習慣の見直しとしてではなく、必要不可欠な治療として取り組むことが重要です。

退院までのリハビリ

運動療法が有効

心筋梗塞や狭心症、あるいは心臓の手術後は、からだを動かすことに不安を感じる人が多いようです。しかし、発作や手術のあとで病状が安定したら、なるべく早くから、からだを動かすことが大切です。
そのために行うのが心臓リハビリテーションです。以前は、病気や手術からの回復の時間が長かったため、リハビリテーションというと、安静にしていたために衰えた筋力など、体力を回復させることに主眼を置いていました。
しかし、最近では症状が安定してから行う運動は、単に体力を回復させるだけでなく、心臓病の病状そのものを改善し、治療として効果があることがわかってきました。そのため、薬物療法などとともに、治療の一環として、運動療法に取り組む医療機関が増えています。

運動療法の効果

運動療法は、とくに狭心症や心筋梗塞などの冠動脈の病気、そして心臓の手術後の治療として、その有効性が認められています。
軽症〜~中等症の心不全や下肢の動脈硬化による閉塞性動脈硬化症に対しても、有効性が認められてきています。運動療法の具体的な効果は、次のとおりです。

  • 冠動脈の障害を改善
  • 適切な運動療法を続けると、冠動脈の内腔が狭くなるのを防ぐことがわかっています。狭窄が改善され、血管の内脛が広くなることもあります。

  • バイパスの発達
  • 運動により、バイパス(側副血行) といって、心筋に血液を送る血管も発達します。狭くなった冠動脈のかわりに、血液不足の心筋に血液を補うことができます。
    また、バイパス術後に運動療法を行った患者さんは、運動療法を行っていない患者さんに比べて、バイパスに使った血管(グラフト)の開存率が高いことも確認されています。バイパス術の効果をいっそう上げるうえでも、運動が役立っているのです

  • ▼心臓のポンプ機能も改善
  • 心臓病の患者さんに対する運動療法は、心ポンプ機能を改善します。運動中の心拍出畳も増えます。

  • 運動能力を向上させる
  • 運動を続けると、運動耐容能(運動がどのくらいできるか、という体力的な能力)が増加することがわかっています。これは健康な人はもとより、狭心症や心筋梗塞、冠動脈バイパス術後、バルーン療法後などの虚血性心臓病、症状が落ち着いている心不全の状態などにおいても実証されています。
    また、健康な人と同様、心臓病の患者さんでも運動耐容能が増加すると、年間生存率が改善するといわれています。つまり、適切な運動を続けることで運動能力が高まると、寿命を延ばすことが可能になるわけです。

  • 骨格筋に対する効果
  • 運動を続けると、骨格筋量が増すこともわかっています。心不全の患者さんでは、有気的代謝を主に行っている赤筋が減って、無気的代謝が主体の自筋の相対的増加が見られ、持久力が低下して疲れやすくなります。運動療法は骨格筋量を増すばかりでなく、この筋線維の割合を正常化させ、持久力の改善に役立ちます。

  • 血管に対する効果
  • 心臓病が悪くなると、血管の拡張能が低下します。運動療法は血管拡張能を改善し、活動筋に対する酸素供給を増やします。

  • 突然死を防ぐ
  • 最近、心筋梗塞後や心不全の生命予後、とくに突然死に関連して、自律神経のバランスの異常が注目されています。運動療法は、自律神経のバランスを調整する神経・体液性因子に働きかけ、副交感神経の活性を改善することが知られています。これにより、突然死などの予防にも役立つとされています。

社会復帰できる運動能力を目指す

発作や手術後のリハビリテーションは、医師の管理のもとに安全を期して行います。入院中のリハビリの目標は、退院までに身の回りのことを楽にこなせる程度、サラリーマンであれば会社に通勤できる運動能力を取り戻すことにあります。

これだけ運動療法にはメリットが多いのですが、次のような場合、運動療法ができない場合もあります。
主治医とよく相談して行うのがポイントです。

  • 心筋梗塞の発症日
  • 不安定狭心症
  • 重症の症候性心臓弁膜症
  • 解離性大動脈癌
  • 重症の先天性心疾患
  • 重症の閉塞性肥大型心筋症
  • 心筋炎急性期、心膜炎急性期
  • 最近の血栓塞栓症
  • 心不全の症状が出ている
  • 急性の感染性の病気
  • 運動で悪化の可能性があるその他の病気
  • コントロールができていない不整脈