ICUでの面会は、感染に気を付ける
冠動脈バイパス術などの手術後の容体はしばらく不安定です。以前に比べると、患者さんへの負担が少ない方法が開発され、回復が早くなっていますが、術後、しばらくは緻密な管理が必要です。重大な合併症が起こりうることを想定して、患者さんを観察することになります。そのため、手術が終わると、患者さんはまずICU集中治療室)で2~3日間過ごして、集中的な医療と看護を受けます。
ICUでの面会は、ごく近しい人に限られ、時間も限定されます。患者さんは免疫力が低下していますから、ふだんなら発生しないような感染が起こることがあります。面会に際しては手を消毒し、マスク、キャップ、上衣を着け、スリッパに履き替えて入室します。患者さんは、手術中に出てくる血液やリンパ液、膿などを体外に排出するためにドレーンという管を取りつけられています。酸素吸入や輸液の点滴なども行われています。重装備の状態であることを念頭において、面会をしてください。
ICU症候群
ICUでは、からだのほうは順調に回復していても、全身麻酔から目覚めた患者さんは、自分がどこにいるのかわからなくなることがあります。2~3日は、妄想や興奮、錯乱状態になることもあります。精神的に不安定になり反抗的になったり、意味のわからないことをいうこともあります。これはICU症候群といい、重症の患者さんや高齢の人にみられがちです。
手術が順調に終わり、面会を待ち望んでいた家族につらく当たることもあります。そのときは、ICU症候群によるものと了解してください。
一過性のものですから、患者さんの態度で家族が一喜一憂しないようにしまししょう。病気のショックもあり、患者さんの精神的なストレスは非常に大きくなっています。
からだの自由がきかず、自由に話すこともできず、孤独感や不安感に襲われることも多いようです。不眠に悩む人も少なくありません。症状が強いときは、医師か看護師に相談しましょう。睡眠薬で不眠を解消するという方法もあります。家族も不安があるでしょうが、患者さんに対しては、できるだけ安心できるような雰囲気づくりを心がけてください。肩や手に触れるなど、スキンシップも患者さんの気持ちを安定させる効果があるようです。
リハビリは家族の協力や支えも必要
一般病棟に移ると、本格的なリハビリテーションがはじまりますが、心臓の手術後は積極的なリハビリが回復を早めます。患者さんのなかには寝ているほうが楽と考えたり、からだを動かすことに不安を感じる人もいます。家族はリハビリのンの意義を理解して協力しでください。
傷口からの感染にも注意する
開胸手術後は、胸骨をワイヤーで固定しています。くしやみをすると痛むことがあります。胸骨は半年ほどで自然にくっつきますが、それまでは前胸部を強くよじるような動作は避けるようにします。筋肉痛がつらい場合は、気軽に医師に相談してください。傷口にかさぶたが残っていたり、テープが残っている場合は、無理にはがすと、感染の原因になることがあります。自然に取れるのを待つようにします。