2013年 1月 の投稿一覧

手術後の管理について

ICUでの面会は、感染に気を付ける

冠動脈バイパス術などの手術後の容体はしばらく不安定です。以前に比べると、患者さんへの負担が少ない方法が開発され、回復が早くなっていますが、術後、しばらくは緻密な管理が必要です。重大な合併症が起こりうることを想定して、患者さんを観察することになります。そのため、手術が終わると、患者さんはまずICU集中治療室)で2~3日間過ごして、集中的な医療と看護を受けます。
ICUでの面会は、ごく近しい人に限られ、時間も限定されます。患者さんは免疫力が低下していますから、ふだんなら発生しないような感染が起こることがあります。面会に際しては手を消毒し、マスク、キャップ、上衣を着け、スリッパに履き替えて入室します。患者さんは、手術中に出てくる血液やリンパ液、膿などを体外に排出するためにドレーンという管を取りつけられています。酸素吸入や輸液の点滴なども行われています。重装備の状態であることを念頭において、面会をしてください。

ICU症候群

ICUでは、からだのほうは順調に回復していても、全身麻酔から目覚めた患者さんは、自分がどこにいるのかわからなくなることがあります。2~3日は、妄想や興奮、錯乱状態になることもあります。精神的に不安定になり反抗的になったり、意味のわからないことをいうこともあります。これはICU症候群といい、重症の患者さんや高齢の人にみられがちです。
手術が順調に終わり、面会を待ち望んでいた家族につらく当たることもあります。そのときは、ICU症候群によるものと了解してください。
一過性のものですから、患者さんの態度で家族が一喜一憂しないようにしまししょう。病気のショックもあり、患者さんの精神的なストレスは非常に大きくなっています。
からだの自由がきかず、自由に話すこともできず、孤独感や不安感に襲われることも多いようです。不眠に悩む人も少なくありません。症状が強いときは、医師か看護師に相談しましょう。睡眠薬で不眠を解消するという方法もあります。家族も不安があるでしょうが、患者さんに対しては、できるだけ安心できるような雰囲気づくりを心がけてください。肩や手に触れるなど、スキンシップも患者さんの気持ちを安定させる効果があるようです。

リハビリは家族の協力や支えも必要

一般病棟に移ると、本格的なリハビリテーションがはじまりますが、心臓の手術後は積極的なリハビリが回復を早めます。患者さんのなかには寝ているほうが楽と考えたり、からだを動かすことに不安を感じる人もいます。家族はリハビリのンの意義を理解して協力しでください。

傷口からの感染にも注意する

開胸手術後は、胸骨をワイヤーで固定しています。くしやみをすると痛むことがあります。胸骨は半年ほどで自然にくっつきますが、それまでは前胸部を強くよじるような動作は避けるようにします。筋肉痛がつらい場合は、気軽に医師に相談してください。傷口にかさぶたが残っていたり、テープが残っている場合は、無理にはがすと、感染の原因になることがあります。自然に取れるのを待つようにします。

弁膜症の投薬以外の治療について

僧帽弁狭窄症では、カテーテルを使ったPTMC(経皮的交連切開術)が普及してきました。PTMCは、日本の医師が開発した方法で、開胸手術をせずに、先端に専用のバルーン(風船) をつけたカテーテルを挿入し、僧帽弁の狭窄部分を広げます。

カテーテルは、太もものつけ根の静脈から挿入し、まず右心房に挿入します。次に心房中隔に小さな穴を開けて、左心房から左心室まで進めます。僧帽弁のところで左心室側のバルーンをふくらませて、僧帽弁に固定します。
さらにバルーンの手前の部分をふくらませて米俵状にし、狭くなった僧帽弁を押し広げて癒着している弁の両端を広げます。この方法は、胸や心臓を切開する必要がなく、患者さんへの負担が少なくてすみます。治療の翌日には動くことができ、入院は数日から一週間程度です。ただし、心房内に血栓があると、治療中に血栓がはがれる恐れがあるので、この方法は行えません。僧帽弁の逆流がある場合には、できないことがあります。数年~10年ぐらいで再び狭くなることが多いのですが、再度行うことができる場合もあります。

手術による治療

弁膜症では、弁を修復する弁形成術も多数行われています。外科的手術で、人工心肺を使い、心臓を数時間止めて行います。
弁が変形したり、弁を支える腱索が切れて、僧帽弁が閉まりにくくなった場合などには、弁の悪くなった部分だけを切除したり、縫い合わせたりします。
弁の病変があまり進んでいない場合には、弁形成術を行うことで生涯にわたり正常に近い弁機能を維持できます。手術後は、数日で歩けるようになり、術後4週間ほどで退院するのが一般的です。

機械弁に置換後は血液をサラサラにする薬を飲み続ける

PTMC や弁形成術は自分の弁を生かすため、これから説明する弁置換術に比べて、血栓が
できる心配が少ないのです。しかし、弁の病変が進んだ場合は、弁を切除して人工の弁に取り替える弁置換術が必要です。
人工弁には金属性(主としてチタン)の機械弁と、ブタの大動脈弁やウシの心膜で作った生体弁があります。
機械弁は耐久性に優れ、約200年は壊れないとされています。しかし、生体弁に比べると、血栓ができやすく、機械弁を使う場合は一生、血を固まりにくくする薬(ワーファリン) を服用する必要があります。
生体弁は血栓ができにくく、心房細動という不整脈がなければ、術後3か月経過した時点でワーファリンを服用しなくてもよくなります。しかし、機械弁と比べると、耐久年数が短く、およそ5年くらいで再び弁置換術が必要になる場合があります。
術後は1週間日ごろから自転車こぎの運動療法をはじめ、1か月くらいで退院できます。
弁置換術後は、細菌感染に注意します。細菌が人工弁につくと、感染性心内膜炎(感染性人工弁) という危険な状態になります。
歯科治療その他の手術が必要な場合、必ず主治医と相談し、抗生物質を服用します。けがによる化膿、肺炎、高熱を発する尿路感染症、婦人科での処置なども要注意となります。