僧帽弁狭窄症では、カテーテルを使ったPTMC(経皮的交連切開術)が普及してきました。PTMCは、日本の医師が開発した方法で、開胸手術をせずに、先端に専用のバルーン(風船) をつけたカテーテルを挿入し、僧帽弁の狭窄部分を広げます。
カテーテルは、太もものつけ根の静脈から挿入し、まず右心房に挿入します。次に心房中隔に小さな穴を開けて、左心房から左心室まで進めます。僧帽弁のところで左心室側のバルーンをふくらませて、僧帽弁に固定します。
さらにバルーンの手前の部分をふくらませて米俵状にし、狭くなった僧帽弁を押し広げて癒着している弁の両端を広げます。この方法は、胸や心臓を切開する必要がなく、患者さんへの負担が少なくてすみます。治療の翌日には動くことができ、入院は数日から一週間程度です。ただし、心房内に血栓があると、治療中に血栓がはがれる恐れがあるので、この方法は行えません。僧帽弁の逆流がある場合には、できないことがあります。数年~10年ぐらいで再び狭くなることが多いのですが、再度行うことができる場合もあります。
手術による治療
弁膜症では、弁を修復する弁形成術も多数行われています。外科的手術で、人工心肺を使い、心臓を数時間止めて行います。
弁が変形したり、弁を支える腱索が切れて、僧帽弁が閉まりにくくなった場合などには、弁の悪くなった部分だけを切除したり、縫い合わせたりします。
弁の病変があまり進んでいない場合には、弁形成術を行うことで生涯にわたり正常に近い弁機能を維持できます。手術後は、数日で歩けるようになり、術後4週間ほどで退院するのが一般的です。
機械弁に置換後は血液をサラサラにする薬を飲み続ける
PTMC や弁形成術は自分の弁を生かすため、これから説明する弁置換術に比べて、血栓が
できる心配が少ないのです。しかし、弁の病変が進んだ場合は、弁を切除して人工の弁に取り替える弁置換術が必要です。
人工弁には金属性(主としてチタン)の機械弁と、ブタの大動脈弁やウシの心膜で作った生体弁があります。
機械弁は耐久性に優れ、約200年は壊れないとされています。しかし、生体弁に比べると、血栓ができやすく、機械弁を使う場合は一生、血を固まりにくくする薬(ワーファリン) を服用する必要があります。
生体弁は血栓ができにくく、心房細動という不整脈がなければ、術後3か月経過した時点でワーファリンを服用しなくてもよくなります。しかし、機械弁と比べると、耐久年数が短く、およそ5年くらいで再び弁置換術が必要になる場合があります。
術後は1週間日ごろから自転車こぎの運動療法をはじめ、1か月くらいで退院できます。
弁置換術後は、細菌感染に注意します。細菌が人工弁につくと、感染性心内膜炎(感染性人工弁) という危険な状態になります。
歯科治療その他の手術が必要な場合、必ず主治医と相談し、抗生物質を服用します。けがによる化膿、肺炎、高熱を発する尿路感染症、婦人科での処置なども要注意となります。