治療

心筋梗塞が危険で怖いわけ

心筋が機能しない

心臓に酸素を供給する冠動脈は、大動脈の根元から右と左の二本が出て、左はすぐに前下行枝と回旋枝の二本に枝分かれしこうそくます。心筋梗塞は、この三本の冠動脈のどれかが詰まって起こります。
心筋梗塞では激烈な胸痛が起こります。胸を押しつぶされる、引き裂かれる、焼け火箸でえぐられる、といった表現をする患者さんが多く、死の恐怖を感じるといいます。死んだほうがよいと表現をする人もいます。狭心症と異なり、安静にしても、発作を鎮める硝酸薬を使っても、痛みが治まることはありません。
痛みを止めるために、モルヒネを使うこともよくあります。
心臓の機能が低下し、自律神経系も乱れるため、呼吸困難になり、チアノーゼといって顔色が紫色になったり、冷や汗、めまい、嘔吐、意識障害が起こることもあります。ただし、糖尿病で神経障害がある人や高齢者では、激しい痛みを感じない人もいます。軽い胸痛や不快感、肩や背中のあたりの痛みくらいで、心電図で発見される場合もあります。

突然発症することも

最近の研究では、心筋梗塞は動脈の内腔がそれほど狭くなつていなくても起こることがわかってきました。内腰の狭窄率が50%程度でも、動脈の内壁のプラークが崩れて内腔をおおえば、簡単に血管を詰まらせて発作を引き起こします。
心筋梗塞を発症する前の冠動脈の狭窄率は、50%未満が多いことを示しています。運動をしても、症状がなく心電図変化も出ないような軽い病変でも、いっきに血栓が詰まって梗塞を起こすことが多いのですが前ぶれとして狭心症の発作、短い胸痛発作、動惇や息切れ、肩や首などの痛みを感じる人もいますが、何の前ぶれもなく突然強烈な痛みに襲われる人も少なくありません。
血縁に狭心症や心筋梗塞になつた人がいたり、肥満、高脂血症、糖尿病、喫煙などの危険因子を持つ人は、用心するに越したことはありません。狭心症がある場合には、硝酸薬を使っても痛みが始まらない、あるいはいつもの発作と違う感じがする、といったことが重大なサインになります。また、発作を起こす間隔が短くなったときなども要注意です。

午前中の発作が多い

発作のきっかけとしては、運動、ストレス、食べ過ぎ、飲み過ぎ、脱水、過労、寒冷前線の通過などが挙げられています。何も思い当たるふしがないという人も少なくありません。
発作が起こる時問帯は、朝の6時から10時ごろが多いという報告があります。この時問帯は、自律神経のスイッチが副交感神経から交感神経に切り替わるときにあたります。自律神経系の嵐ともいわれる現象が起こり、発作を引き起こすのではないかとの説があります。
朝は血圧が下がっているところに水分不足で脱水となり、血流の粘桐皮が増して発作につながりやすいともいわれます。1日のうち2番目に多いのは、夜の9時ごろです。1日の疲れがたまったり、食事や酒席、入浴時間にあたっているのかもしれません。

短時間のうちにショック、不整脈、心不全と続くことも

心筋梗塞は、急死を招くこわい病気です。心筋細胞は、血管が詰まってから15分ほどで死にはじめ、2時間ほどで完全に死んでしまいます。死をもたらす原因としては、ショック、不整脈、心不全が挙げられます。ショックは、心筋が広い範囲わたって壊死したときに起こります。
ポンプ作用が急激に低下して、脳や心筋が酸素不足に陥ります。不整脈は、発作の初期にしばしば起こります。冠動脈が詰まり心筋の一部が壊死しはじめると、異常な自動能により余分な刺激が発生することがあります。
心室性の期外収縮が起こり、脱が飛んだり、動惇がするといった症状が出ます。さらに心室頻拍が引き起こされると、心室筋がふるえるような状態となる心室細動から、心停止に至ることがあります。刺激伝導系付近の心筋が壊死すると、房室ブロックや脚ブロックが起こることがあります。
刺激の伝達の一部が途切れるため、心拍動が極端に少なくなる徐脆性不整脈が誘発され、脳の酸欠から、めまい、失神を起こします。血圧が低下し、冠動脈の血流も低下することから、心筋の虚血がいっそう広がるという悪循環になります。
心筋は心臓のポンプ作用の担い手です。心筋が侵されると、ポンプ作用に失調が起こってきます。ポンプの障害の第一段階では肺がうっ血し、呼吸困難に陥ります。さらに肺水腫、肝虚血、脳虚血など全身に影響がおよび、最終的には多臓器不全から死に至ります。

CCU冠動脈疾患集中治療室)のある病院へ急ぐ

心筋梗塞の敦死率は3割~5割 といわれますが、専門病院に入院後の死亡率は1割台です。心筋梗塞が起こったら、一刻も早く詰まった冠動脈を再開させなければなりません。同時にショックや不整脈、心不全の有無をチェックし、急死を防がなければなりません。痛みをやわらげる処置も必要です。CCU冠動脈疾患集中治療室) は、こうした応急処置を24時間体制で行える医療施設です。
発作が起こつたら早く救急車を手配して、CCU のある病院で治療を受けることが重要です。

硝酸薬 狭心症 発作を抑える 血管拡張作用のある薬

硝酸薬 狭心症

硝酸薬 狭心症 発作を抑える薬です。硝酸薬は、狭心症の発作を抑えるために広く使用される薬です。血管を拡張させる作用があり、心臓への負担を軽減することで発作の予防や緩和に役立ちます。

硝酸薬 狭心症 発作を抑える薬

硝酸薬は、狭心症の発作を抑えるために広く使用される薬です。血管を拡張させる作用があり、心臓への負担を軽減することで発作の予防や緩和に役立ちます。

舌下錠や噴霧薬

狭心症の発作を鎮める硝酸薬は、一度狭心症の発作を起こした患者さんには、携帯するように一定量が処方されます。
舌下錠と噴霧薬は即効性がありますが、15分ほどしか効きません。このため、数時間以上効果が続くタイプも、予防薬として処方されます。

この薬を使っているときは、勃起不全治療薬のバイアグラを絶対に使用しないでください。互いに血管拡張作用が増強され、ときに死に至るほどの低血圧を起こします。

舌下錠は舌の下に入れて溶かすと、成分が口の粘膜から吸収されて効果を現します。口の中が乾いているときは唾液で溶かすか、水をひと口飲んでから舌の下に入れるとよいでしょう。ニトログリセリン、ニトロペンは飲み込んでしまうと効きません。

ニトロールは飲み込んでも効きますが、効果はずっと弱くなります。早く効かせたいときは、錠剤をかみ砕いてから舌の下で溶かすと、1分くらいで効いてきます。噴霧薬は、高齢者など口が乾きやすい人に使いやすくなっています。口を開けたまま息を止めて口の中にスプレーして、すぐに口を閉じます。30秒くらい唾液を飲み込まないようにすると、効果がよく現れます。

副作用でふらつくこともあるので座ってから

硝酸薬は血管拡張作用があり血圧が少し下がります。まれに気分が悪くなったり、ふらつきやめまいが起こることがあるので、座った姿勢安全を確認してから使います。

血圧が下がって気分が悪くなったときは枕をしないで横になり、足を高くしておくと、15~20分くらいで回復します。
横になれないときは、座って前かがみになり頭を低くします。薬が効かない場合は、薬によって2~3回使用できますが、それでも胸痛が15分以上続くときは、重い狭心症か心筋梗塞になっている可能性があります。すぐに救急車を手配しましょう。

この薬は重大な副作用はほとんどありません。東部の血管が広がると一時的に頭痛がしたり、顔がほてったり、吐きけがすることがあります。血圧低下に伴って、頻脈が出ることもあります。しばらく使うと慣れてきますが、症状が続くときは、医師に相談してください。発作が治まってから口をすすぐと、少し副作用が軽くなります。

予防的に使用することも

薬を処方されたら、いつも必ず携帯してください。発作が起こったらすぐに使うほか、発作が起こりそうな作業や運動をする前にも使うとよいでしょう。薬を使っても効き方が悪くなったり、発作の回数が増えた、あるいは痛みが強くなった場合は、次の診察日を待たないで連絡してください。
薬は予防的に使った場合も含め、使用した日時、状況、効き方をメモして、主治医に報告します。

硝酸薬の主な作用

硝酸薬は体内で一酸化窒素(NO)を放出し、血管の平滑筋を弛緩させることで以下の効果をもたらします。

  1. 冠動脈の拡張
    心臓を栄養する冠動脈を広げ、血液の流れを改善して心筋への酸素供給を増やします。
  2. 静脈の拡張
    静脈を拡張して心臓に戻る血液量を減少させ、心臓への負担を軽減します(前負荷の軽減)。
  3. 動脈の拡張
    動脈の抵抗を低下させ、心臓が血液を送り出す際の負担を軽減します(後負荷の軽減)。

主な硝酸薬の種類と使い方

1. 舌下錠(ニトログリセリン)

  • 特徴: 急性の狭心症発作時に使用される速効性の薬。
  • 使い方: 舌の下に置き、発作が治まるのを待ちます。効果は数分で現れ、10~30分ほど持続します。
  • 注意点: 効果がない場合は数分後に追加で服用可能ですが、3回までに留める必要があります。

2. スプレー型(ニトログリセリンスプレー)

  • 特徴: 舌下錠と同様に速効性があり、持ち運びに便利。
  • 使い方: 口腔内に直接噴霧し、吸収を待ちます。

3. 貼付剤(ニトログリセリンパッチ)

  • 特徴: 長時間作用するタイプで、狭心症の予防に使用。
  • 使い方: 皮膚に貼り付けて持続的に薬を吸収させます。一定時間で剥がし、薬剤耐性を防ぐための無薬時間を設けることが重要です。

4. 内服薬(硝酸イソソルビド)

  • 特徴: 発作の予防や慢性的な狭心症の治療に使用。
  • 使い方: 医師の指示に従い、毎日決まった時間に服用します。

使用上の注意点

  1. 低血圧に注意
    血圧を急激に下げる可能性があるため、服用後は座ったり横になったりして安静を保つことが推奨されます。
  2. 薬剤耐性の予防
    長期使用により効果が薄れることがあります。医師の指示に従い、無薬時間を設けることが大切です。
  3. 併用禁忌
    バイアグラなどのED治療薬と併用すると、急激な血圧低下を引き起こす危険があります。
  4. 効果の確認
    発作時に舌下錠やスプレーで効果が見られない場合、すぐに医師の診察を受ける必要があります。

副作用

  • 頭痛(血管拡張によるもの)
  • めまい、ふらつき
  • 動悸(軽度の場合が多い)

治療

狭心症の治療の進め方

硝酸薬発作を抑える

狭心症にはいくつかのタイプがあり、それぞれ治療法が異なりますが、発作が起こつたときには、まず発作を鎮めるための治療が行われます。それには、まず安静にして、ニトログリセリンなどの硝酸薬を使います。硝酸薬はどのタイプの狭心症にも有効で、次の作用があります。

  • 冠動脈を拡張させて心筋への血液の流れを改善
  • 全身の静脈を拡張させて心臓へ帰ってくる静脈血の量を減らし、ポンプの負担を軽減
  • 全身の動脈を拡張し、血圧を下げて、心臓への負担を軽減

以上の作用により、心筋へ送り込む酸素を増やす一方で、心筋で使われる酸素量を減らし、結果として心筋の酸素不足を解消して発作を鎮めます。硝酸薬が効きにくくなるなど不安定狭心症の疑いがある場合は、発作を鎮めると同時に心筋梗塞への移行や急死を防ぐために、入院して24時間体制で血圧や心電図をモニターし、管理します。

薬物療法を中心に禁煙、運動などで再発を防止

発作が治まってからの治療は、安定狭心症も不安定狭心症もほぼ同じで、基本となるのは薬物療法です。再発予防のために、ベータ遮断薬、持続性硝酸薬、カルシウム括抗薬、アスピリンなどの抗血小板薬もよく使います。これらの薬は虚血性心臓病で使うものです。
日常生活では動脈硬化を防ぐためのくふうが必要です。とくに重要なのは、禁煙と運動です。

カテーテル治療やバイパス治療を行うケースもある

以上の治療を行っても発作が起こりやすかったり、心筋梗塞になる可能性が高い場合には、血管一そのものの治療をしたほうがよいかどうかを検討します。
冠動脈造影により病状をチェックして、カテーテルによる治療あるいは冠動脈バイパス手術を選択することになります。
こうした治療をしても、動脈硬化が起こった血管を元どおりにはできません。糖尿病があると、カテーテル治療をしても予後はよくならないとされています。
最近の研究では、スタテン系の抗高脂血症薬と適切な運動療法が、プラークを安定させ、動脈硬化をよくするとされ、高脂血症の人ではスタチン系の薬がよく使われます。一番だいじなのは、日常生活に注意し、危険因子を減らしていくことです。