自宅内で特に心臓発作が多発するのは冷えやすい脱衣場やトイレ

朝、布団から飛び起きるのは危険

狭心症や心筋梗塞の発作は、寒い冬の季節に多発します。朝に多いのも特徴です。これは、血圧の上昇と深い問係があります。寒冷の刺激を受けると、自律神経のうちの交感神経が緊張して血管が収縮し、血圧が上がってしまうのです。

そこで、もともと血圧が高い人や、狭心症や心筋梗塞を起こしたことがある人などは、冬は特に要注意です。外出時は、室内と外気の温度差が大きいので、防寒に気を配ることが大切です。家の中でも、台所、廊下、トイレ、風呂場の脱衣場、玄関などは室温が低い場所。血圧の急な変化をさけるためには、暖房機器をうまく利用して、こうした場所の室温も18度前後に保つのが理想です。

ところで、携帯型の血圧計(医療用機器)を24時間身につけて生活し、血圧の1日の変化を記録しつづけると体調の変化がわかりおすすめです。
血圧は温度の変化だけでなく、日常の何気ない動作や習慣でも数10mmHG単位で急上昇します。

中でも、朝の起床後の3時間は、最も血圧が上昇しやすい時間帯となります。そのため、心筋梗塞や脳梗塞などによる突然死が起こりやすくなります。寝ている問は、自律神経のうちの副交感神経が優位で、血圧は最も低い状態にあります。
ところが、目覚めると交感神経が優位になります。このときには血管が収縮しているため、急に飛び起きると、ただでさえ上がりやすい血圧が一気に上昇してしまうのです。

特に、寒い冬の季節は、布団の中と外気には温度差があるので危険が増大します。冬の朝は、目覚めたらすぐに布団から出るのではなく、数分問は寝床で過ごし、ゆっくりと体を動かしてから起きるようにしましょう。暖房機器のタイマーを起床時間に合わせてセットしておくのもよい方法です。そのほかにも血圧が上昇しやすい動作や習慣は多くあります。

たとえば姿勢です。血圧の上がり方が最も大きかったのは、おじぎのように上体を前にかがめる姿勢でした。日常生活の中では、床に置いた物を取ろうとしたり、床や風呂の掃除をしたりするときにこのような姿勢になります。

前かがみの姿勢を取ると、腹圧が大きくなります。その結果、血圧が急に上がるので、高血圧の人は特に危険です。前かがみになるときは、床などに片ひざを着けて、腹圧がかからないよう注意します。

次に、排尿や排便の我慢も血圧を急上昇させる要因となります。これは、最大で50mmHGも上がることがわかりました。尿意や便意を感じたら、できるだけ早くトイレに向かいましょう。便秘ぎみの人や、いきんで排便するクセのある人も血圧が上がり、心筋梗塞などの危危険が増大します。特に和式トイレでは使用時に前かがみになるので要注意です。室温も低いので暖房機器を使って温めておきましょう。

心臓病の主な原因は運動不足で頻繁に歩く習慣のある人は悪玉コレステロールが少ない

乱れた生活習慣が心臓病を引き起こす

心臓病は、生まれながらにして心臓に欠陥のある場合を除いて、そのほとんどが長年にわたる運動不足、または過激な運動や労働、食べすぎ、肥満、ストレス、喫煙などの悪い生活習慣によって起こります。

かつて心臓病は、60代以降に起こることが多かったのですが、最近では40代50代の比較的若い人たちにも増えています。これには、さまざまな原因が考えられますが、主に、食生活が豊かになり、動物性の脂肪分を多くとるようになったこと。そして、交通機関などが発達して歩く機会が減り、運動不足になっている人が増えているためです。

食生活が豊かになったのは喜ばしいことですが、運動不足に陥ったまま、体内に摂取したエネルギーを消費しないでいると、やがてさまざまな病気を引き起こします。

例えば、血液中の糖分が多くなる糖尿病や、血液中の脂質(コレステロールなど)が過剰になる脂質異常。高血糖と高コレステロールで血液がドロドロになると、高血圧も招きます。この状態が長く続けば、血管の内壁に惑玉(LDL)コレステロールなどが付着して、動脈硬化が進みます。全身に血液を送り出す心臓にも大きな負担がかかるため、心臓自体の機能も衰えてきます。その結果、心筋梗塞や狭心症などの心臓病を起こしやすくなるのです。

心臓を強化するのは有酸素運動

心臓の衰えや動脈硬化の進行を防ぎ、心臓病を撃退する一番の方法は、適度な運動(有酸素運動)を習慣にすることです。

有酸素運動は、酸素を体内に取り入れながら行う運動のこと。これを毎日続ければ、心臓の筋肉が強化され、血液を送り出す力が大きくなります。

心筋が強化されると、1回の心筋の収縮で送り出せる血液の量が増え、心拍数(心臓が拍動する回数)が減少します。全身に血液をスムーズに送り出せるようになるので、心筋が必要とする酸素や栄養の量も少なくてすみます。その結果、心臓の負担を大幅に減らすことができるのです。

有酸素運動は、心筋の内部にある毛細血管も増やします。そのため、栄養や酸素の供給量が増加すると同時に、老廃物の排出も促され、心筋を健全に保ちます。

それだけではありません。有酸素運動は、血管の柔軟性や弾力性を高めつつ、血液中のコレステロールなどを消費するため、、血液がドロドロになるのを抑えます。この作用は、高い血圧を下げる効果があるので、心筋の負担が減ることにつながります。

こういった理由から適度な運動は心臓を健全な状態に保ち、心臓病(特に心筋梗塞)の予防にも再発防止にも役立つということです。

では、誰にでも簡単にできる一番いい運動法とはどのようなものでしょうか。それは、ウォーキングです。ウォーキングといっても、心臓に問題のある人には負担の大きい速歩は向きません。ベストは、スローペースで1 日につき6000歩を目指す「ゆっくり歩き」です。

ストレスと運動の関係性なども興味深いところです。

歩くと善玉コレステロールが増える

では、ゆっくり歩きはどのくらいの適さで歩けばいいのでしょうか。分速でいうと1分間に40~60メートル(時速2.4~3.6km)ですが、人と話をしながら歩けて、息苦しさを感じない程度の速さで歩けばいいでしょう。

ゆっくり歩きは、ウォーキングの経験のない人や体力のない人、足腰に痛みのある人であれば、1日に20分程度から始めましょう。これを1~2週間ほど続け、体が慣れてきたら少しずつ時間を延ばしていきます。これを1~2ヶ月続けてみて、心臓や足腰に異常がなければ、1日に6000歩まで歩くことを目標にします(6000歩を1日2~3回に分けてくのもOKです)。

ゆっくり歩きは、毎日行いますが、忙しくてできないという人は、1週間に2日休んで5日歩くというのでもかまいません。雨降りの日などは、屋内で趣味に打ち込んだり、家事などで体を動かしたりするといいでしょう。

ゆっくり歩きを続けていると、早い人なら数週間で効果が現れてくるでしょう。血糖値や血圧、総コレステロール値が下がって、善玉(HDL)コレステロールが増えてきます。

善玉コレステロールは、血管に付着した悪玉コレステロールの除去や、血液中の悪玉コレステロールを肝臓へ運んで処理する働きをします。つまり、善玉コレステロールが増えれば、悪玉コレステロールを減らすことができるのです。

無痛のまま突然死する「隠れ心筋梗塞」

心筋が壊死して激しい胸痛に襲われる

心筋に酸素や栄養を供給している冠動脈が動脈硬化を起こすと、狭心症や心筋梗塞といった心臓尿を招きます。

狭心症と心筋梗塞の主な症状は胸の痛みです。しかし、心筋梗塞では、狭心症とは比較にならないほどの激しい痛みに襲われます。痛みは胸だけでなく、背中やみぞおち・腕・肩・頭・歯など、上半身のさまざまな部位に広がることもあります。

これは、上半身のそれぞれの部位の知覚神経が混線をおこし、痛みの情報がほかの部位の神経n送られてしまうのが原因です。

胸痛の持続時問も、狭心症が数分から10分程度なのに対し、心筋梗塞の胸痛は通常で30分以上、時には20時問以上に及ぶこともあります。

また、心筋の壊死により心臓の働きが低下するため動悸・むかつき・嘔吐・呼吸困難・意識障害といった症状を伴うこともあります。

こうした心筋梗塞の症状は、狭心症のように運動や動作をしたときばかりでなく、安静時に起こることもあります。特に発症しやすい時問帯は、体が徐々に目覚めて活動しはじめる朝9時ごろや、1日の疲れがたまった夜9時ごろです。いずれにせよ、激しい胸痛に襲われたときは、一刻も早く病医院で適切な治療を受けることが肝心です。

高齢者や糖尿病の人は隠れ心筋梗塞に注意

ところが、心筋梗塞は、必ず激しい胸の痛みを伴うとは限りません。ふつうの心筋梗塞に見られる自覚症状がほとんど見られない「隠れ心筋梗塞」と呼ぶべき病気もあるので、注意が必要です。

隠れ心筋梗塞は、専門的には無痛性心筋梗塞といい、急性の心筋梗塞に比べ、死亡率が約3倍も高いという報告があります。

それでは、なぜ隠れ心筋梗塞では、症状が現れないのでしょうか。これは、病気が軽いせいではなく、痛みを感じる知覚神経が鈍くなっているからなのです。

特に、高齢者や高血糖・糖尿病の患者さんは神経障害を起こしている場合が多く、知覚神経が鈍くなっています。痛みの症状が自覚できないために心筋の壊死も進みやすく、呼吸困難や意識障害が出るまで気づかない人も多いのです。

しかし、隠れ心筋梗塞にも、前ぶれの症状が全くないわけではありません。実は、呼吸困難や意識障害などの発作を起こす以前に、吐きけ、胸のむかつき、疲労感といった症状が出ていることがあるのです。

高齢者の場合には、息苦しいとか、なんとなく体調が悪いといったことで、たまたま心電図を撮ってみて、初めて心筋梗塞であることがわかる場合もあります。

そこで、高齢者や糖尿病の人は、吐きけ・胃や胸のむかつき・疲労感などの症状が数日以上続くようなら、できるだけ早く診察を受けることをおすすめします。

さらに、隠れ心筋梗塞の予防策としては、発症の根本原因となる動脈硬化を引き起こす危険要因を取り除くことが肝心。危険要因とは、高血圧・高血糖・脂質異常・肥満・喫煙などです。

これらの危険要因を放置すれば、知らない問に動脈硬化が進み、隠れ心筋梗塞の予備軍となります。そして、やがて急性心筋梗塞や隠れ心筋梗塞を引き起こすことになるのです。

そうならないためには、こうした危険因子を1つでも少なくしていくことが大切です。禁煙は今すぐにはじめるべきでしょう。

左肩だけのこりは狭心症の前ぶれ、中年太りの女性は要注意

重い荷物をもって歩くと発症しやすい

狭心症は冠動脈の動脈硬化によって、心筋が一時的に酸欠状態に陥る病気。動脈硬化を招く高血圧・脂質異常・高血糖が日本人に増えるのと比例して狭心症にかかる人の数も多くなっていて、特に50代以降の男性によく見られます。

狭心症の症状では、胸からみずおちにかけて痛みが起こりますが、心筋梗塞ほどは激しくありません。胸を締めつけるような圧迫感や、息苦しさやむかつき程度の不快感を感じることもあります。胸痛が起こった場合も、持続時間は10分以内と比較的短いのが特徴です。

胸痛の大半は、なんらかの運動や動作をきっかけにして起こります。例えば、重い荷物を持って外出したとき、自転車で坂道を登っていたとき、排便時にいきんでいたときなどです。

動作のほかにも、感情の変動や興奮などがきっかけとなることもあります。家族との口論やテレビを見て興奮したとき、夜中に問違い電話で起こされたときなどです。

ただし、狭心症の中には冠動脈が攣縮を起こして生じるタイプもあります。この場合は早朝や安静時に胸痛が起こります。

中年太りで胆石症の女性になりやすい

狭心症の症状は、胸痛だけではありません。狭心症の前ぶれ症状としては、左肩やあご・奥歯の痛みや胸やけなどがあります。

痛みの信号は、障害が起こっている部位から直接的に脳に伝わるわけではなく、まず脊髄に伝わります。脊髄には、さまざまな知覚神経が適っていますが、これが混線を起こして肩・あご・奥歯などに痛みが伝わったり、胸やけの症状として現れたりすることがあるのです。

ただし、高齢者や糖尿病の方は神経障害を起こしている場合が多く、痛みを感じる神経の働きが鈍くなっています。このため、痛みを感じない人もいれば、めまいや耳鳴り、手足のしびれ、冷や汗などが狭心症の前ぶれとして現れる人もいます。

なお、最初に、狭心症は男性に多い病気と述べましたが、胆石症の女性が併発するケースも少なくありません。

これは、胆石による激痛が知覚神経を適して冠動脈のけいれんを引き起こし、狭心症を誘発するからではないかと考えられています。胆石症になりやすいのは、中年以降に体重が増えた女性です。食べ過ぎに注意し、肥満にならないように注意します。

狭心症の前ぶれ症状
  • 胸焼け
  • 手足のしびれ
  • 冷や汗
  • めまい
  • 耳鳴り
  • あごや奥歯の痛み
  • 左肩の痛みやこり

胸痛の原因はさまざまだが、体を曲げる動作や深呼吸で痛みが増せば肋間神経痛

実際に痛む部位を指で押してみる

胸の痛みは、狭心症や急性心筋梗塞の代表的な症状といわれています。胸の奥が圧迫されるような痛みが突然起こったなら、これらの心臓病が疑われます。

狭心症や心筋梗塞など、虚血性の病気では、重症であれば血圧が急激に下がり、顔面や胸・背中などに冷や汗をかきます。これらは、虚血性の病気と非虚血性の病気を見分ける判断材料になります。

とはいえ、胸痛の大半は、虚血性の心臓病とは問係がありません。胸が痛くなると、誰しも不安になるものですが、生命に危険のない胸痛のほうが圧倒的に多いのです。

胸痛を訴えてきたときには、痛む場所を指で押してみます。こうすることによって、内臓からの痛みなのか、神経・筋肉・骨など体の表面の痛みなのか、緊急処置を要するかどうかを判定できるのです。

「痛い!」と叫んだときは、体の表面の痛みです。一方、体の深部にある内臓の痛みなら、指で押しても痛みに変化はありません。痛む範囲が狭く、痛む場所を指1本で指し示せるようなときは、心臓病や内臓の病気ではないと思って大丈夫です。

胸痛によって救急搬送されてきても狭心症ではなかった方は多数います。その中で多いものの1つが、肋骨に沿って走る神経痛む肋間神経痛です。

肋間神経痛では、体を曲げたり、深呼吸をしたりしたときに強い痛みが走ります。肋骨の骨折や、筋肉痛の場合も同様です。これらには、痛む範囲が狭い、痛みが針で刺したように痛いといった特徴もあります。また、通常は左右のどちらか片側にだけ胸痛が現れます。

さらに最近、狭心症の疑いありとして紹介された主婦の方が、実は愛犬の死がきっかけで起こったペットロス症候群だったということもありました。こういった「心因性の胸痛」も、このところ増えているのです。ほかにも本来は「胸焼け」であるはずの逆流性食道炎(食道の病気)の方や、さらに、突発的に胸痛を感じて受診した病院で、急性心筋梗塞と誤認された、自然気胸(肺の病気)の方などもいらっしゃいます。

これら以外にも心膜炎、胸膜炎(これらは発熱を伴う)、さらには死に至る大動脈の解離など、胸の痛みの原因になる病気はたくさんあります。

以上のように、体の表面の胸痛や心因性の胸痛もさることながら、痛みが引かない、痛みが強くなる、冷や汗が出る、呼吸がしにくいなどの症状を伴う場合には、素早く内科や専門医を受診したほうがいいでしょう。

狭心症と心筋梗塞の異なる点