検査

ホルター心電図で日常生活での異常を検査

日常生活における心臓の異常をチェック

ホルター心電図は、ホルダー博士が考案した日常活動中の長時間心電図記録です。患者さんによっては、不整脈や波形の異常がたまにしか現れず、短時間の検査では異常を見つけられない場合があります。
また狭心症や不整脈による心電図の変化のなかには、運動負荷心電図でも見つからないものもあります。ホルター心電図は、こうした異常を見つけるために、多くの場合、24四時間にわたり心電図を記録します。

胸部に3~5個の電極をつけて導線をまとめ、腰に装着した500g程度の記録装置に接続します。二~三誘導の心電図をテープレコーダに記録し、あとでコンピュータで解析する方法です。最近はテープを使わずに、lCメモリーに記録する小型のもの(50g程度) も出てきました。

ホルター心電図を付けたら入浴以外はふだんの生活をする

検査中は、ふだんと同じ生活をします。そうすることでで、動惇や胸痛などがどんなきっかけで起こるのかを確実に知ることができます。
じっととしていて何も症状が出なかったのでは、診断が下せないこともあります。ただし、防水がされていないので、入浴はできません。シャワーが可能のものもありますが、あまり普及していません。
記録器は安い新車くらいの高価なものですから、壊さないように、またよい記録をとるための注意点をしっかり守ります。
たとえば、電極がはずれるような激しい運動、大汗が出る運動は控えます。ただし、そうした激しい運動で症状が出る場合には、危険のない範囲で、そのような労作をしてみます。活動記録の装着と取りはずしは病院で行いますから、2回は病院に行くことになります。

胸に電極を貼るので、前開きの服を着ます。電極にかぶれやすい人は、前日にステロイドの入ったクリームを電極を貼る位置に塗っておくと、楽な場合があります。直前に塗ると、電極がはがれてしまいます。

行動記録もつける

検査中は行動記録も必要です。就寝、起床、食事のほか、移動、仕事、家事、飲酒、喫煙なども記録します。仕事でパソコンなどの作業を行うと動悸を起こす人もいるので行動は、細かく記入します。
何か症状があったときには、記録装置のボタンを押し、症状の内容と時刻、持続時間も書いてください。解析の結果は約1週間でわかります。ホルター心電図では、次のようなことがわかります。

  • 自覚症状が出ているときの心電図の変化。たとえば、胸痛の原因は狭心症か不整脈か、または心臓神経症か、など
  • ふだんの生活のなかで不整脈が出ているかどうか。出ているときは、その種類と程度
  • 狭心症や心筋梗塞につながる心筋虚血の有無とその重症度
  • 不整脈、狭心症の薬を使っている場合は、その効果
  • 心拍数の変化から自律神経の異常を検出。心不全や糖尿病があると、自律神経のうちの副交感神経の活性が低くなり、危険な不整脈が出やすくなる
  • ペースメーカを使っている場合は、装置が正常に作動しているかどうか

などがわかります。

運動負荷心電図 心臓の健康状態を知るための検査

運動負荷心電図

運動負荷心電図 (Exercise Stress Test) は、心臓の健康状態を調べるための検査です。心電図(ECG/EKG)を測定しながら運動を行うことで、運動中や運動後に心臓に異常が現れるかどうかを確認します。この検査は、特に冠動脈疾患や狭心症の診断に役立ちます。

運動負荷心電図 活動時の心臓を検査

安静時心電図はじっとしているときの心臓の働きを調べるもので、心臓に負荷がかかったときの状態は調べられません。

人間は、運動をすると、心臓は全身に血液を送るために、たくさんの酸素を必要とし、酸素の消費量が増加します。心筋に酸素を供給する冠動脈の血流量が少ないと、心筋は酸素不足になります(心筋虚血)。
また、心臓の機能が低下すると、安静時には症状がなくてーも、運動すると不整脈が起こったり、息切れの症状などが出ることがあります。この状態を調べるために行うのが、運動負荷心電図です。労作性狭心症では、胸痛などの症状が出たり、心電図に変化が現れます。痛みなどがない無症候性心筋虚血でも、心電図に変化が現れます。
運動負荷試験で運動が強くなると消えてしまう期外収縮は、あまり気にする必要はありません。反対に、運動負荷試験をすると出てくる運動誘発性不整脈の中には、生命を脅かす危険なものもあります。高脂血症や糖尿病、高血圧、肥満などで冠動脈硬化が疑われる場合にも、この検査を行うことがあります。

階段昇降法

運動負荷心電図検査で簡便な方法は、マスターの2階段テストです。年齢、性別、体重によって決められたリズムと速度で一定回数、2段の階段を昇降し、その前後に心電図を記録します。これで心機能のおおよその目安がつきますが、運動中に心電図や血圧をモニターしないので、運動中の変化がとらえられません。何か起こった場合、危険なこともあります。安全に止確な心電図をとるためには、トレッドミルか自転車エルゴメータを使います。

トレッドミル法

速度と傾斜の変わるベルトコンベア状のトレッドミルの上を歩いたり走ったり、運動負荷をかけて心電図の変化を調べます。
坂道を上る、急ぎ足で歩く、といった日常生活のなかで、心臓にどんな変化が現れるのかを調べることができます。
ベルトは連続的に、または2~3分ごとに、速度と傾斜が増していきます。最初はゆっくり、だんだんと駆け足ぎみになっていきます。ふつうは息切れ、足の疲れ、胸痛などで、運動ができなくなるまで歩きます(症候限界性最大負荷試験)。
運動中は血圧や心電図を連続的に測定します。年齢に応じた予測心拍数に達した場合は、危険な状態になる前に、運動量が十分とみなして終了することもあります。検査時問は状況により異なりますが、およそ30分程度です。

自転車エルゴメータ法

自転車のペダルをこぐ要領で、電気的に抵抗を調整した発電機を回して心臓に負荷をかけ、血圧や心電図をモニターします。
ペダルの重さ(抵抗)を変えることで、負荷量を変えていき、心電図の変化を見ます。検査時問はおよそ30分程度です。トレッドミルと違い、つまずいたりふらついても倒れることがありません。体重をサドルで支えるため、多少ひざや腰が悪い人でも、安全にできる利メリットもあります。心臓手術後や心筋梗塞の急性期、高齢者によく使われます。ただし、虚血の誘発という点ではトレッドミルのほうが優れています。

信頼できる運動能力測定

心臓病の治療目標のひとつに運動耐容能の改善ということが挙げられています。運動耐容能とは、どのくらいの運動ができるか、という能力です。運動耐容能が高い人は日常活動が活発で、いつまでも元気(不老)で長生き(長寿)できます。これは多くの研究で明らかにされていて、健康な人はもとより、心臓病の人にもよく当てはまります。

すべての心臓病の終末像は、心不全と呼ばれる多臓器不全状態または不整脈による死亡です。これらは運動耐容能が低い患者さんほど起こりやすいのです。心不全の人では、心臓のポンプ機能の善し悪しより、運動耐容能を調べるほうが、患者さんの予後を推測するのに役立ちます。心臓病の治療の評価に、運動耐容能を調べますが、正確に測定できるのが、心肺運動負荷試験(CPX)です。

心肺運動負荷試験は、運動中の心臓と肺の機能を同時に測定する検査です。トレッドミルかエルゴメータを使い、呼気ガス分析用のマスクをして運動をします。運動中は心電図や血圧とともに、酸素の摂取量、炭酸ガスの排泄量、換気量などを測りす。

運動負荷心電図の情報に加えて、最大酸素摂取量などの運動耐容能や有酸素運動の上限であるAT (嫌気性代謝閾値) などの情報が得られます。これにより、心不全の重症度を判定できます。

また、運動療法を行う際に、心臓に過剰な負担をかけずに安心して楽しめる運動強度などがわかります。4分間、安静時の心電図や酸素摂取量などを測定してから、運動を開始し、だんだん運動強度を増やしていきます。心電図変化や血圧異常がな.ければ、できるところまで続けます。

足が疲れるか、息切れが強くなるなどの症状が出たら中止します。試験の所要時間は30~50分程度です。マスクをつけても苦しくはありません。話すと呼気ガス分析データに影響します。とくに異常がない限り、黙ってふつうに呼吸をしながら検査を続けます。

運動後は6分間安静にして、心臓と肺の回復状況を調べます。一番がんばったところでの酸素摂取量を最大酸素摂取量といい、健康な人ばかりでなく、心臓病の人の生命予後の重要な指標になります。

心臓病の人では、最大酸素摂取量が3.5ml分/kg(1メッツ)増加すると、年間死亡率が12%ほど下がると言われています。

運動負荷テスト時の注意点

運動負荷心電図、運動負荷試験は、心臓に負担をかける検査ですから十分な注意が必要です。
検査室では、救急薬品や、いざというときのための電気ショック(直流除細動器) を用意しています。医師が立会い、とくに運動負荷試験の訓練を受けた臨床検査技師がようすを見ながら進めます。

ひざや足腰の弱い人は、事前に医師に伝えておきましょう。検査前には脈拍と血圧の測定を行います。体調がよくないときは、その旨を伝えてください。
途中で気分が悪くなったり、痛みが出たときには遠慮せずに、手を振るなど、あらかじめ指示された合図を送るようにします。前日は疲れが残らないよう、睡眠を十分にとります。食事は1時間前までに軽くすませます。

極端な空腹、満腹はよくありません。たばこ、とくにお酒は厳禁です。上衣は電極をつけるので脱ぎ着がしやすいもの、下衣は運動用またはゆとりのある軽いズボン、ソックスを用意します。

検査

安静時心電図

12種の電気の流れを心電計に記録

心電図検査は、心臓の異常を調べるときに行う重要な検査です。一般的に行われるのは、一二誘導心電図というものですが、これは安静の状態で検査するので、安静時心電図ともいいます。ベッドに横になって安静にし、両手首と両足首に一個ずつ、前胸部に六個の電極をつけ、心臓の中で起こっている現象を一二の方向から眺めて記録します。同じ電気現象を見ているわけですが、心電図は口見る方向によって形が異なります。医師はこれを総合して頭の中で立体的に組み立て、左右の心房・心室の電気的興奮や動きを調べます。

上衣は脱ぎ着がしやすいものにします。スラックスは裾にゆとりがあると、脱がずに検査を受けられます。素足がすぐ出せるように、パンティストッキングよりはソックスがよいでしょう。
時計や指輪、ネックレスなどは、はずす必要はありません。電極を装着後、心電図を記録する時仙間は1分前後です。力を入れたりすると、波形に乱れが生じることがあるので、リラックスしましょう。

縦軸は電位変化、横軸は時間

心電図には波形が記録され、縦軸は電位変化、横軸は時間を示します。波形には、P、Q、R、S 、T 、Uの名前がつけられていますが、名前に特別な意味はありません。心臓は刺激伝導系を伝わる電気信号によって、縮んだり凄んだりして血液を循環させますが、そのペースメーカーは、洞結節という特殊心筋です。

  1. 洞結節から発信された信号は、まず右心房を刺激し、その後、左心房を刺激して心房を収縮させます。このとき現れる波をP波といいます。
  2. 洞結節から放電された電気信号は房室結節に集められ、いったんスピードダウンします。血液が心房から心室へ流れる時間を稼ぐためです。
  3. その後、ヒス束、右脚・左脚へと分かれ、プルキンエ繊維へ猛スピードで伝わって心室を収縮させ、QRS波を形成します。
  4. 心室の興奮が収まって回復過程に入ると、T波と呼ばれるゆるやかな波が現れます。Q RS彼の終わりからT彼の始まりまでをST部分といいます。

収縮運動の異常を示す心電図

洞結節から心室全体に電気信号が伝わるまでの時間は、0.2~0.3秒くらいです。洞結節は安静時には一分間に50〇~100回の電気信号を発しています。心臓は、この信号を自発的に発信して収縮します。これを心臓の「自動能」といいます。自動能は刺激伝導系の特殊心筋のすべてが持っています。
心室や心房の筋肉はふだんは自動能を持ちませんが、洞結節が信号を出さなかったり、心房からの刺激が伝わってこない場合などには、自動能を持つことがあります。こうして心臓には幾重もの安全装置が備わり、規則正しいリズムで動いています。
ところが、心筋に虚血が起こつたり、電解質や自律神経系に異常が生じると、刺激伝導系はうまく作動せず、収縮運動に異常をきたします。刺激伝導系の特殊心筋や心臓を収縮させる作業心筋に異常があっても、心電図に異常が現れます。心電図の異常は、大別すると2つあります。1つはリズム、もう一つは波形です。

刺激伝導系の異常

刺激伝導系の異常は、不整脈となって心電図に現れます。不整脈には、さまざまな種類がありますが、大きく分けると、リズムが乱れる期外収縮や心房珊動、遅くなる徐脆、速くなる頻脈があります。

波形の異慧

病気が原因の場合は、波形に異常が現れます。たとえば、熟練した専門医は心電図の波形を見るだけで、心筋虚血の起こつた場所と状態を推定することができます。労作性狭心症の発作の最中には、ST部分が低下します。これは心内膜層の虚血のために起こります。スパスム(けいれん) 型の狭心症では、STが下がる場合もありますが、虚血が強いと、逆に一過性にST部分が上昇することがあります。
心筋梗塞の発作時には、ST部分が上昇し、しばらくすると深いQ波が現れます。深いQ波は、心筋が壊死して電気現象が失われたことを表しています。
波形の異常は、こうした心臓痛のほか、呼吸器系の病気や高血圧、甲状腺の痛気、電解質の異常による病気でも起こります。ただし、原因となる痛気のすべてが安静時心電図でわかるわけではありません。
狭心症や不整脈の一部は、発作時には心電図に異常が現れますが、発作のないときにはまったく正常の波形を示す場合もあります。