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心臓カテーテル検査・治療:よくある質問(FAQ)

心臓カテーテル検査・治療:よくある質問(FAQ)

心臓カテーテル検査や治療は、心臓の病気を診断したり治療したりするために非常に重要な医療行為です。ここでは、心臓カテーテルに関するよくある質問(FAQ)とその回答をまとめました。

心臓カテーテル検査・治療:よくある質問(FAQ)

Q1. 心臓カテーテル検査とは何ですか?

心臓カテーテル検査は、手首や肘、足の付け根などの血管から細い管(カテーテル)を挿入し、心臓や冠動脈(心臓を養う血管)まで進めて、直接心臓の内部や血管の状態を調べる検査です。造影剤を使って血管をX線で撮影したり、心臓内の圧力や酸素濃度を測定したりすることで、心臓病の種類や重症度を診断します。

Q2. 心臓カテーテル治療とは何ですか?

心臓カテーテル治療は、カテーテル検査と同じように細い管を血管から挿入し、心臓や血管の病気を直接治療する方法です。主な治療法には以下のようなものがあります。

  • 経皮的冠動脈インターベンション(PCI / 冠動脈形成術): 狭くなった冠動脈をバルーン(風船)で広げたり、ステント(金属製の網状の筒)を留置して血管を広げた状態に保ったりする治療法です。
  • カテーテルアブレーション治療: 不整脈の原因となっている心臓の異常な電気回路を、カテーテル先端から発する熱(高周波)や冷気(冷却)で焼灼・凝固して、不整脈を根本的に治す治療法です。
  • 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI): 重症の大動脈弁狭窄症に対し、外科手術なしにカテーテルを使って人工弁を留置する治療法です。

Q3. 検査や治療中に痛みはありますか?

カテーテルを挿入する部分には局所麻酔をするため、挿入時の痛みはほとんど感じません。カテーテルが血管内を進む感覚は通常ありませんが、人によっては軽い圧迫感などを感じる場合があります。治療によっては、静脈麻酔で鎮静状態にするため、ほとんど痛みを感じずに受けることができます。

Q4. 検査や治療にかかる時間はどれくらいですか?

検査だけであれば、30分〜1時間程度で終わることが多いです。治療の場合は、内容によって異なりますが、1時間〜2時間程度が目安となることが多いです。ただし、患者さんの状態や病気の複雑さによって時間は前後します。

Q5. 入院期間はどれくらいですか?

検査のみの場合、日帰りで行うこともありますが、多くは1泊2日程度の入院となります。治療の場合、通常は前日に入院し、治療翌日または翌々日に退院となることが多いです(2泊3日~3泊4日程度)。不整脈のアブレーション治療など、一部の治療ではもう少し長くなることもあります。

Q6. 検査や治療後に安静は必要ですか?

カテーテルを挿入した部位の止血が重要です。

  • 手首や肘の血管からの場合: 検査・治療後すぐに動けることが多いです。
  • 足の付け根(鼠径部)の血管からの場合: 止血のために数時間のベッド上安静が必要になることがほとんどです。止血器具を使用した場合も、しばらくは安静が必要となります。

医師や看護師の指示に従い、安静時間を守ることが合併症予防につながります。

Q7. 検査や治療後の水分摂取はなぜ重要ですか?

カテーテル検査や治療では、造影剤を使用することが一般的です。造影剤は腎臓から排泄されるため、検査後に多めに水分を摂ることで、腎臓への負担を減らし、造影剤を体外に早く排出する効果があります。造影剤を早く体に排泄するためにしっかり水を飲みます。

Q8. 合併症のリスクはありますか?

心臓カテーテル検査・治療は安全性が高い手技ですが、合併症が全くないわけではありません。主な合併症としては、以下のものがあります。

  • 穿刺部(カテーテルを挿入した場所)の出血、血腫
  • 造影剤アレルギー反応
  • 不整脈
  • 腎機能の悪化(造影剤による)
  • 血管の損傷、血栓
  • ごく稀に、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な合併症

合併症のリスクについては、事前に担当医から十分な説明がありますので、疑問な点があれば遠慮なく質問しましょう。

Q9. 治療後に再狭窄(再び血管が狭くなること)はありますか?

PCI治療を受けた場合、稀にステントを留置した血管が再び狭くなる「再狭窄」が起こることがあります。薬剤溶出性ステント(DES)の登場により再狭窄率は大きく低下していますが、ゼロではありません。再狭窄を防ぐために、術後に医師の指示通りに薬を服用したり、生活習慣を改善したりすることが重要です。

Q10. 治療後の生活で気をつけることはありますか?

  • 薬の服用: 医師から処方された薬(特に抗血小板薬など)は、自己判断で中止せず、指示通りに服用してください。中断すると再狭窄や血栓のリスクが高まります。
  • 生活習慣の改善: 動脈硬化の進行を防ぐため、喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの危険因子を管理することが重要です。バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙などを心がけましょう。
  • 定期的な受診: 治療後も定期的に受診し、心臓の状態や合併症の有無を確認することが大切です。

Q11. Qカテーテル検査及び治療した後、日常生活や運動の制限はありますか?

    • 日常生活の制限はありません。治療当日のお風呂は、ひかえるようにします。痛みがでないような軽い運動は治療の2日後から再開できます。痛みを伴うような運動に関しては、痛くない程度の強度から再開してもらいます。個人差があるので診察時に医師に確認してください。

心臓カテーテル検査や治療に関して不安な点があれば、担当の医師や看護師に遠慮なく質問し、十分に納得した上で治療に臨むことが大切です。

心臓カテーテル検査でわかること

心臓検査 適宜必要となる検査について

心臓検査 その他

心臓検査 適宜必要となる検査について紹介します。いくつかありますが、その検査の目的とどうしてその検査が必要になるのかを紹介したいと想います。いくつかある 心臓検査の中で、

  • 心臓核医学検査(RI)
  • 心シンチ
  • 体表電位図
  • 加賀平均心電図
  • 圧受容体反射検査
  • プレスモーグラフィー

心臓検査

心臓核医学検査(RI)で虚血の部位を調べる

心臓核医学検査は医療用の放射性同位元素(RI=ラジオアイソトープ)を用いて、心臓の筋肉の状態や肺にたまった水の状態を調べる検査です。

RIを静脈から注射し、その流れや心臓への分布をガンマカメラで撮影します。使用するラジオアイソトープは微量で寿命の短いものですから、からだへの影響はほとんどありません。代表的なのは、心筋シンチィグラフィーです。ラジオアイソトープの種類によって、心筋梗塞の広がりをとらえたり、心筋障害の検出、心筋症の診断などに役立ち、心臓の交感神経の状態などを調べることもできます。

運動負荷検査を併用すると、運動時の心機能や虚血状態になっている場所を見つけることができます。

心シンチの受け方

当日の食事や薬については検査機関の指示を守ってください。貼り薬は検査の30分以上前にはがしておくのが一般的です。

運動負荷検査を併用する場合は、空腹、満腹を避けます。検査は外来で行い、所要時間は検査内容により異なります。

事前に問い合わせておくとよいでしょう。運動負荷検査を行う場合は、運動しやすい服装で受診してください。

撮影は、原則として運動後と約4時間後の2回行います。1回日の撮影は1時間強、2回目は30分程度かかります。運動は最初の1回だけです。ラジオアイソトープは高価で保存が効かないため、都合が悪くなり検査を受けられない場合は、むだにならないように事前に連絡をしてください。

体表電位図

マッピング検査とも呼ばれ、ふつうの心電図検査より数多くの電極をつけ、心臓が発信する電気信号を余すところなく検査するものです。情報をコンピュータで解析しさまざまな心臓病の診断に役立てます。たとえば心筋梗塞は、その部位やひろがりが、より詳しくわかります。
不整脈の発生部位や原因を知ることもできます。一部の頻脈症では外科的治療やカテーテルアプレーションのためのデータにもなります。
検査には安静時心電図と同様、何の準備もいりません。ただし胸、背中を含め87か所に電極をつけるため、検査時問は電極をつける時間を含め、30~45分程度かかります。
胸毛は剃ることになります。

その他の心電図検査のいろいろ

心電図をコンピュータに取り込み、1拍ごとに微妙に異なる心拍数の変化を記録して、自律神経と心機能の関連を調べます。検査時問は15分程度です。

加賀平均心電図

心電図を重ね合わせて心臓の小さな電位を検出します。ふつうカテーテルを入れなければ記録できないヒス束の電位を記録したり、心筋の興奮の終了にバラツキがないかを見ることができます。これにより心室頻拍などの危険な不整脈が出やすい状態かどうかを調べます。検査時問は20~30分程度です。

QTディスパーション

ふつうの心電図と同じですが、記録スピードを変えてとります。心臓のいろいろな部分で心筋が興奮してから、元の状態に戻るまでの時間のずれを測り、心室頻拍などの危険な不整脈が出やすい状態かどうかを調べます。検査時問は5分程度です。

圧受容体反射検査

心臓の悪い患者さんは、健常の人に比べて、不整脈や突然死などの発生率が高く、その背景には自律神経の異常があるといわれています。圧受容体反射検査(BRS) では、心機能が低下している患者さんや心臓手術前後の患者さんの自律神経の状態を調べます。

リハビリテーション後の効果を判定するときに行うこともあります。検査ではフェニレフリンという血圧を上げる薬を注射して血圧を少しだけ上昇させます。

自律神経が正常であれば、血圧が上がると、すぐに心拍数が減るので、両者の関係を調べることで、自律神経の機能がわかるしくみです。血圧の変化を測定するには、トノメトリーという器械を手首につけます。装着に微妙な調節が必要で、15~20分程度かかります。検査中は安静にしています。血圧を上げますが、通常は自覚症状は出ず.安全性は確立されています。
ただし、ただ緑内障、甲状腺機能克進症、心房細動がある患者さん、
収縮期血圧が170MmHg以上の人は検査できません。

プレスモーグラフィー

心臓の機能が低下している息者さんは、一般に運動機能も低下しています。これには下肢の筋肉の血流や代謝、とくに血管の内皮機能などが大きく影響しているといわれます。

血圧測定の要領で太ももとふくらはぎにマンショエットを巻き、加圧して血流を止めます。その後、マンシュツトをゆるめ、虚血になっていた下肢にどのくらいの速度で血液が流れ込むかを調べます。強い加圧中は下肢に血液が流れなくなるため、はじめは少し痛みを感じます。我慢できないときは、からだを動かさず、担当者に口頭で伝えてください。検査時問は45分程度です。

ふつうは用意された半ズボンに着替えます。足のしびれや長時間歩けなくなる閉塞性動脈硬化症の検査としても使います。

運動療法の前後に行い、下肢の血管の改善度を評価することもあります1また、下肢にむくみがあるとき、静脈機能を調べるためにも行います。このときはマンシェットを強く締めることはありません。検査前3時間は、強い運動や運動療法、たばこを避けてください。

四肢血圧測定で下肢閉塞動脈硬化症を見つける

下肢閉塞動脈硬化症は、高脂血症や高血圧、糖尿病などの生活習慣病があると発症しやすく、虚血性心臓病や脳卒中を起こしやすいといわれます。この検査は、足首と上腕の血圧からABIという指数を算出し、下肢閉塞動脈硬化症を早期に見つける検査です。動脈硬化の程度もわかります。

左右の手首、足首にマンシュツトを巻いて、同時に血圧を測り、胸に心音測定のマイクを取り付けます。血圧測定は2回、10分程度で終わります。準備は何もいりませんが、両腕と両足のふくらはぎに血圧計を巻きやすい服装で受診してください。

起立負荷試験で神経調節性失神を検査

失神、めまい、ふらつきは、脳や心臓の異常のほか、自律神経の失調でも起こります。Tilt検査といい、失神などが自律神経の異常によるものかどうかを調べます。心電図と血圧を測定しながら傾斜させた台に立ち、失神やその兆候が現れるかを調べます。

失神を起こしやすくするため、少量の血管拡張薬を点滴しながら傾斜台に立つこともあります。所要時間は45~90分程度。朝食は軽めにし、薬は医師に相談しましょう。

カテーテル検査 わかること 受け方について

カテーテル検査 わかること

心臓のカテーテル検査でわかることについて詳しく紹介します。カテーテル検査は、心臓や血管の病気を診断したり、治療したりするために行われる非常に重要な精密検査です。手首や足の付け根の血管から細い管(カテーテル)を挿入し、心臓や血管の内部まで進めて、直接的な情報や画像を得ることで、様々な病態を詳細に把握することができます。

カテーテル検査 わかること

カテーテル検査でどのようなことがわかるのか、その種類や得られる情報、そして検査の意義について紹介します。

血管に細い管を入れて心臓まで通す

心臓カテーテル検査とは、柔らかい細い管(カテーテル) を腕または足の血管から心臓まで挿入し、圧力を測ったり、造影剤を入れて写真や映画を撮ったり、生検をするなど、さまざまな検査の総称です。
血管や心臓の内部から構造や動き、血圧、血流などを調べることで、狭心症や心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症などの診断を確定し、心不全の程度なども知ることができます。治療方針の判断材料となり、治療効果の判定にも使います。
心臓の詳しい検査を行う場合に、心臓カテーテルは必須です。

冠動脈造影

造影剤を注入して冠動脈を映し出します。狭心症や心筋梗塞などの虚血性心臓病の場合、冠動脈のどのあたりが詰まったか、その状態はどうかを調べます。

大動脈造影

解離性大動脈瘤、大動脈縮窄症などを調べます。大動脈弁閉鎖不全があると、血液が逆流して左心室が造影されます。

左室造影

左心室の庄を測定し、造影剤を注入して左心室内部を撮影します。心筋梗塞や心筋症では、左心室の壁運動が低下したり左心室の拡大が見られます。僧帽弁不全があると、本来映し出されない左心房が僧帽弁の逆流のために映ります。

右心カテーテル

柔らかいスワンガンツカテーテルがよく使われます。カテーテルの先端にバルーン(風船) をつけ、血液の流れに乗って静脈から右心房、右心室、肺動脈まで挿入します。肺動脈庄、右心室・右心房の圧、心拍出量を調べ、心不全の状能小や肺高血圧の状態を調べます。
また右心室から造影剤を注人すると、三尖弁閉鎖不全症や右心室の心筋症、肺動脈弁狭窄症なども診断できます。

電気生理学検査

略称はEPS。本の電極カテーテルを静脈から挿入し、心臓内の電気現象を分析したり、電気刺激を与えて心臓内の心電図を記録します。不整脈の診断と治療方針の決定に重要です。

心筋生検

心筋の病気が疑われるとき、カテーテルで心筋の一部を採取し病理検査をします。

カテーテル検査の注意点

心臓カテーテル検査はほとんど危険性のない検査ですが、出血を伴う検査なので完壁に安全とはいいきれません。
このため承諾書が必要です。検査は、局部麻酔で行い、カテーテルを、手首、肘、太もものつけ板のいずれかの血管に挿入します。
検査中に動惇などの異常を感じたら、からだを動かさずに、口頭で伝えます。

検査時間は個人差がありますが、おおよそ1時間です。カテーテルを抜いたあとは、圧迫止血をするだけです。
通常は血管切開や縫合をしないので抜糸はしません。検査後六~八時間は、止血のためにベッドでの安静が必要です。安静解除後、出血することがあり、そのときは再度圧迫止血をします。
内出血や痛みを感じる場合もありますが、通常は処置の必要はなく自然に消失します。退院は原則として、検査の翌日となります。一泊入院で行われる検査です。

1. カテーテル検査とは?基本的な知識 まとめ

カテーテル検査は、診断と治療の両面で活用される、循環器疾患における中心的役割を担う手技です。

1.1 カテーテル検査の概要

  • 目的: 心臓や血管の構造や機能、血流の状態などを詳細に評価し、病気の診断を確定したり、治療方針を決定したりするために行われます。
  • 方法: 局所麻酔後、手首(橈骨動脈)や足の付け根(大腿動脈、大腿静脈)などの血管から、数ミリ程度の細い管(カテーテル)を挿入します。このカテーテルをX線透視装置で確認しながら、目的の心臓の部屋や血管まで慎重に進めていきます。
  • 種類: 診断を目的とした「診断カテーテル検査」と、治療を目的とした「治療カテーテル検査(インターベンション)」があります。このページでは主に診断でわかることに焦点を当てます。

1.2 なぜカテーテル検査が必要なのか?

超音波検査(心エコー)、CT検査、MRI検査などの非侵襲的な検査でも多くの情報が得られますが、カテーテル検査は、それらの検査では得られないより詳細で確実な情報を提供します。

  • 直接的な圧力測定: 心臓の各部屋や血管内の圧力を直接測定できます。
  • 血流の評価: 血液の量や流れの異常を正確に把握できます。
  • 造影剤による詳細な画像: カテーテルから造影剤を注入することで、血管の狭窄や閉塞、奇形などを鮮明に映し出すことができます。
  • 生体組織の採取(生検): 必要に応じて、心臓の筋肉の一部を採取し、病理組織学的検査を行うことができます。

2. カテーテル検査で「心臓」についてわかること

心臓カテーテル検査は、心臓の様々な構造や機能異常を明らかにします。

2.1 冠動脈疾患の診断(狭心症・心筋梗塞)

心臓カテーテル検査の最も一般的な目的の一つが、冠動脈(心臓を栄養する血管)の状態の評価です。

  • 冠動脈の狭窄や閉塞の有無、部位、程度:
    • カテーテルを冠動脈の入り口まで進め、造影剤を注入しながらX線撮影を行います。これにより、冠動脈のどの部分がどれくらい狭くなっているか(狭心症の原因)や、完全に詰まっているか(心筋梗塞の原因)を鮮明な画像で確認できます。
    • 単なる狭窄だけでなく、血管の形態(石灰化の有無、屈曲など)も詳細に把握し、治療方針を決定する上で重要な情報となります。
  • バイパス血管の評価: 過去に冠動脈バイパス手術を受けたことがある場合、バイパス血管の開通状況や狭窄の有無も確認できます。

2.2 心臓の機能評価

心臓のポンプ機能や弁の働きを詳細に調べることができます。

  • 心腔内圧の測定:
    • 心臓の各部屋(右心房、右心室、肺動脈、左心房、左心室、大動脈)の血圧を直接測定し、心臓の拍出能力や、弁の異常による圧力変化(狭窄や逆流)を評価します。
    • これにより、心不全の重症度や、心臓弁膜症の具体的な状態(弁の開き具合や閉じ具合の異常)を正確に把握できます。
  • 心拍出量の測定:
    • 心臓が1分間に送り出す血液の量(心拍出量)を測定し、心臓のポンプ機能の指標とします。
  • 酸素飽和度の測定:
    • 心臓の各部屋や主要血管内の血液の酸素濃度を測定し、心臓の先天性疾患などで血液が異常な経路で流れている(シャントがある)かどうかを調べます。例えば、心房中隔欠損症や心室中隔欠損症などの診断に役立ちます。

2.3 心筋疾患の診断

心臓の筋肉そのものの異常を評価します。

  • 心筋生検:
    • 心筋症(拡張型心筋症、肥大型心筋症など)や心筋炎が疑われる場合、カテーテルを用いて心臓の筋肉のごく一部を採取し、顕微鏡で病理組織学的検査を行います。これにより、病気の確定診断や原因の特定に繋がります。

2.4 不整脈の原因究明(電気生理学的検査)

不整脈の原因となる心臓内の異常な電気信号の発生部位や伝導経路を特定します。

  • カテーテルアブレーション前:
    • 不整脈の原因となっている異常な電気信号の発生源や、その信号が伝わる経路をカテーテルを用いて詳細にマッピングし、焼き切る(アブレーション)治療を行う際の正確な位置を特定します。
    • 心房細動、上室性頻拍、心室頻拍などの治療に不可欠な検査です。

3. カテーテル検査で「血管」についてわかること

心臓以外の全身の血管の状態も、カテーテル検査によって詳細に評価することができます。

3.1 末梢動脈疾患の診断

四肢の動脈(特に足の血管)の狭窄や閉塞を評価します。

  • 血管の狭窄・閉塞の有無、部位、程度:
    • 足のしびれや痛み、間欠性跛行(歩くと足が痛くなり休むと改善する)などの症状がある場合、カテーテルで下肢動脈に造影剤を注入し、血管の詰まり具合を評価します。
    • これにより、血行再建術(バイパス手術やカテーテル治療)の適応や治療方針を決定します。

3.2 腎動脈狭窄症の診断

腎臓へ血液を送る腎動脈の狭窄を評価します。

  • 高血圧の原因究明: 腎動脈の狭窄は、治療抵抗性の高血圧の原因となることがあります。カテーテルで腎動脈の狭窄を確認し、必要に応じてカテーテル治療(バルーン拡張術やステント留置術)を行います。

3.3 脳血管疾患の診断(脳血管内治療前)

脳動脈瘤や脳動静脈奇形など、脳血管の異常を詳細に評価します。

  • 脳血管の形態と血流:
    • 脳出血やくも膜下出血の原因となる脳動脈瘤の正確な位置、大きさ、形などを詳細に把握します。
    • 脳動静脈奇形の構造や血流、周囲の血管との関係などを評価し、カテーテルを用いた治療(コイル塞栓術など)の計画に役立てます。

4. カテーテル検査でわかることの重要性

カテーテル検査は、心臓や血管の病気の診断と治療において、他の検査では得られない以下のような重要な情報を提供します。

  • 確定診断: 疑わしい病気の診断を最終的に確定させます。
  • 病態の詳細な把握: 病気の進行度、範囲、関連する他の異常など、病態を包括的に理解できます。
  • 治療方針の決定: 手術、カテーテル治療、薬物治療など、最適な治療法を選択するための根拠となります。
  • 治療効果の評価: 治療後にカテーテル検査を行うことで、治療がどれくらい成功したかを客観的に評価できます。

5. カテーテル検査を受ける際の注意点

カテーテル検査は一般的に安全な検査ですが、少なからずリスクも伴います。

  • 事前の説明: 検査の目的、方法、起こりうる合併症(出血、感染、アレルギー反応、不整脈、脳梗塞、心筋梗塞など)について、担当医から十分な説明を受け、納得した上で同意書に署名することが重要です。
  • アレルギーの有無: 造影剤アレルギー、局所麻酔薬アレルギーの既往がある場合は、必ず事前に申告してください。
  • 持病・内服薬: 糖尿病、腎臓病などの持病や、血液をサラサラにする薬(抗血小板薬、抗凝固薬)を服用している場合は、事前に医師に伝えて指示を仰ぎましょう。

まとめ:カテーテル検査は「心臓・血管の羅針盤」

カテーテル検査は、心臓や血管の病気において、目に見えない内部の情報を明らかにし、病気の診断から治療、そしてその後の経過観察に至るまで、極めて重要な役割を果たす精密検査です。冠動脈の狭窄、心臓弁膜症、不整脈の原因、末梢血管の異常など、多岐にわたる病態を詳細に「見える化」することで、患者さん一人ひとりに最適な医療を提供するための「羅針盤」となります。

この検査が必要と診断された場合は、担当医と十分に話し合い、疑問点を解消した上で検査に臨むことが大切です。