2012年 11月 の投稿一覧

心臓超音波検査でわかること

心臓内部の状態を見る

心臓超音波(心エコー図) 検査は、人間の耳には聞こえない振動数の高い超音波を使って、心臓の内部を調べる検査です。
漁船が魚群のありかを調べる魚群探知機と同様のしくみで、胸に探触子(プローブ) を当てて超音波を送り、反射波を画像としてモニターに映し出します。

心エコーでわかること

この検査では、心臓をさまざまな角度から観察して、心房や心室の大きさ、弁のようす、心室の壁の厚さ、心筋の動きなどを調べます。
これにより、心肥大、心拡大、高血圧性心臓病、、心臓腫瘍、心膜疾患、心臓弁膜症、心筋梗塞の有無とその程度がわかります。超音波ドップラー法では、さらに心臓内の血流のようすを調べることができます。カラードップラ一法では、血流が赤と青の二色で表示され、逆流性の弁膜症や先天性の心臓病の診断に役立ちます。PW法、CW法という方法では、心臓内の血流を観察します。弁狭窄症では弁の前後の庄の差を推定し、弁口面積を計算します。
肺高血圧症の有無なども診断できます。心臓超音波検査は、心臓病の診断だけでなく、治療方法や手術の時期を決めるための判断材料となります。また治療効果の判定にも役立ちます。
検査そのものは、寝ているだけで終わります。

心エコーの受け方

心臓超音波検査は、痛みもなく、妊娠中に胎児の検査をするときにも使われる安全な検査です。ペースメーカや人工弁をつけていても影響ありません。飲食の禁止もありません。
検査の際には、左側を下あるいは斜め下にして横になります。
これは心臓をできるだけ胸壁に近づけるためです。探触子にゼリーをつけて胸に当てるとき、少し冷たく感じます。
肺が超音波の通過を妨げないように、息を吐き出して止めるように指示されることもあります。検査時問は30~60分程度ですが、画像を得にくかったり異常が見つかると長引くことがあります。

エコーで判別できない部位は経食道エコーを行うことも

食道は心臓の後ろ側にあり、左心房の後面に接しています。胸壁から見にくい心臓の後ろ側も、食道からはよく観察できます。
食道に探触子を挿入して観察します。この方法を軽食道超音波(エコー)検査といいます。この検査では、左心房の左心耳という部分を観察しやすく、心房内の血栓の検査に役立ちます。
人工弁の裏側、胸部大動瘤の有無なども調べられます。

経食道エコーの受け方

検査当日は、検査中のおう吐を避けるため、薬を服用するための水以外は、飲食をしないでください。
検査前には、食道に探触子を挿入するため、事前に麻酔をして、のどの神経をマヒさせておきます。胃カメラと同じ要領ですが、胃までは入れません。
検査中は唾液を飲み込まないようにします。検査時問は人により異なりますが、5~10分ほどです。検査後は十分にうがいをし、少なくとも30分は飲食をしないでください。麻酔のため、のどがしばらくしびれますが、これは自然に戻ります。

血管エコー検査は動脈硬化を調べる

血管エコー検査は、体表から動脈に探触子を当て、動脈の太さ、血栓の有無、動脈硬化の程度、血流の流れを調べます。
症状に応じて、次のような部分を調べますが、検査時問は人により異なります。10分以内のこともあれば、1時間以上かかることもあります。

腹部大動脈の検査も行う

自覚症状がなかったり、触診や聴診で見つからない腹部大動脈痛を見つけられる場合があります。胃腸にガスや食物があると、超音波が妨げられて十分な調査ができないことがあります。検査当日は薬のための水以外は、飲食を避けてください。

▼頸動脈の検査

脳卒中の原因となる頚動脈の詰まり具合、脳動脈や冠動脈の動脈硬化を予測したり、血栓の有無などを調べます。飲食の禁止はありません。
探触子が頚動脈に触れやすいように、首を反らせて検査をすることがあります。首に痛みがあったり反らせにくい場合は、検査担当者に、その旨を伝えてください。

下肢の動脈検査

閉塞性動脈硬化症では、下肢の血流が悪くなるため、足が冷えて痛んだり、間欠跛行といって、歩いてしばらくすると痛くて歩けなくなり、しばらく休むと、また歩けるようになるといった症状が現れます。こうした症状があるときは、下肢に動脈硬化がないかどうかを調べます。

腹部のエコー検査が必要になることも

腹部エコー検査は、胆のう、肝臓、膵臓、腎臓、さらに下腹部の臓器を対象とした検査です。通常、循環器系の検査では行いませんが、痛みの訴え方によっては、この検査を行うことがあります。たとえば、胆石症の痛みの場合は、胸の痛みと区別がつかないことがあります。
中性脂肪値が高いと脂肪肝になりやすく、肥満、飲酒家に多くみられます。超音波で簡単に見つけられます。
腹部エコー検査では、腹部のいろいろな部分に探触子を当てますが、ときに強めに押しっけることもあります。からだの向きを変えたり、呼吸を止めてもらうこともあります。検査前6時間は絶食です。水と薬は飲んでかまいません。検査直前には、なるべくトイレに行かないようにします。女性では、訴えによっては乳腺の検査をすることもあります。

ホルター心電図で日常生活での異常を検査

日常生活における心臓の異常をチェック

ホルター心電図は、ホルダー博士が考案した日常活動中の長時間心電図記録です。患者さんによっては、不整脈や波形の異常がたまにしか現れず、短時間の検査では異常を見つけられない場合があります。
また狭心症や不整脈による心電図の変化のなかには、運動負荷心電図でも見つからないものもあります。ホルター心電図は、こうした異常を見つけるために、多くの場合、24四時間にわたり心電図を記録します。

胸部に3~5個の電極をつけて導線をまとめ、腰に装着した500g程度の記録装置に接続します。二~三誘導の心電図をテープレコーダに記録し、あとでコンピュータで解析する方法です。最近はテープを使わずに、lCメモリーに記録する小型のもの(50g程度) も出てきました。

ホルター心電図を付けたら入浴以外はふだんの生活をする

検査中は、ふだんと同じ生活をします。そうすることでで、動惇や胸痛などがどんなきっかけで起こるのかを確実に知ることができます。
じっととしていて何も症状が出なかったのでは、診断が下せないこともあります。ただし、防水がされていないので、入浴はできません。シャワーが可能のものもありますが、あまり普及していません。
記録器は安い新車くらいの高価なものですから、壊さないように、またよい記録をとるための注意点をしっかり守ります。
たとえば、電極がはずれるような激しい運動、大汗が出る運動は控えます。ただし、そうした激しい運動で症状が出る場合には、危険のない範囲で、そのような労作をしてみます。活動記録の装着と取りはずしは病院で行いますから、2回は病院に行くことになります。

胸に電極を貼るので、前開きの服を着ます。電極にかぶれやすい人は、前日にステロイドの入ったクリームを電極を貼る位置に塗っておくと、楽な場合があります。直前に塗ると、電極がはがれてしまいます。

行動記録もつける

検査中は行動記録も必要です。就寝、起床、食事のほか、移動、仕事、家事、飲酒、喫煙なども記録します。仕事でパソコンなどの作業を行うと動悸を起こす人もいるので行動は、細かく記入します。
何か症状があったときには、記録装置のボタンを押し、症状の内容と時刻、持続時間も書いてください。解析の結果は約1週間でわかります。ホルター心電図では、次のようなことがわかります。

  • 自覚症状が出ているときの心電図の変化。たとえば、胸痛の原因は狭心症か不整脈か、または心臓神経症か、など
  • ふだんの生活のなかで不整脈が出ているかどうか。出ているときは、その種類と程度
  • 狭心症や心筋梗塞につながる心筋虚血の有無とその重症度
  • 不整脈、狭心症の薬を使っている場合は、その効果
  • 心拍数の変化から自律神経の異常を検出。心不全や糖尿病があると、自律神経のうちの副交感神経の活性が低くなり、危険な不整脈が出やすくなる
  • ペースメーカを使っている場合は、装置が正常に作動しているかどうか

などがわかります。

運動負荷心電図

活動時の心臓を検査

安静時心電図はじっとしているときの心臓の働きを調べるもので、心臓に負荷がかかったときの状態は調べられません。

人間は、運動をすると、心臓は全身に血液を送るために、たくさんの酸素を必要とし、酸素の消費量が増加します。心筋に酸素を供給する冠動脈の血流量が少ないと、心筋は酸素不足になります(心筋虚血)。
また、心臓の機能が低下すると、安静時には症状がなくてーも、運動すると不整脈が起こったり、息切れの症状などが出ることがあります。この状態を調べるために行うのが、運動負荷心電図です。労作性狭心症では、胸痛などの症状が出たり、心電図に変化が現れます。痛みなどがない無症候性心筋虚血でも、心電図に変化が現れます。
運動負荷試験で運動が強くなると消えてしまう期外収縮は、あまり気にする必要はありません。反対に、運動負荷試験をすると出てくる運動誘発性不整脈の中には、生命を脅かす危険なものもあります。高脂血症や糖尿病、高血圧、肥満などで冠動脈硬化が疑われる場合にも、この検査を行うことがあります。

階段昇降法

運動負荷心電図検査で簡便な方法は、マスターの2階段テストです。年齢、性別、体重によって決められたリズムと速度で一定回数、2段の階段を昇降し、その前後に心電図を記録します。これで心機能のおおよその目安がつきますが、運動中に心電図や血圧をモニターしないので、運動中の変化がとらえられません。何か起こった場合、危険なこともあります。安全に止確な心電図をとるためには、トレッドミルか自転車エルゴメータを使います。

トレッドミル法

速度と傾斜の変わるベルトコンベア状のトレッドミルの上を歩いたり走ったり、運動負荷をかけて心電図の変化を調べます。
坂道を上る、急ぎ足で歩く、といった日常生活のなかで、心臓にどんな変化が現れるのかを調べることができます。
ベルトは連続的に、または2~3分ごとに、速度と傾斜が増していきます。最初はゆっくり、だんだんと駆け足ぎみになっていきます。ふつうは息切れ、足の疲れ、胸痛などで、運動ができなくなるまで歩きます(症候限界性最大負荷試験)。
運動中は血圧や心電図を連続的に測定します。年齢に応じた予測心拍数に達した場合は、危険な状態になる前に、運動量が十分とみなして終了することもあります。検査時問は状況により異なりますが、およそ30分程度です。

自転車エルゴメータ法

自転車のペダルをこぐ要領で、電気的に抵抗を調整した発電機を回して心臓に負荷をかけ、血圧や心電図をモニターします。
ペダルの重さ(抵抗)を変えることで、負荷量を変えていき、心電図の変化を見ます。検査時問はおよそ30分程度です。トレッドミルと違い、つまずいたりふらついても倒れることがありません。体重をサドルで支えるため、多少ひざや腰が悪い人でも、安全にできる利メリットもあります。心臓手術後や心筋梗塞の急性期、高齢者によく使われます。ただし、虚血の誘発という点ではトレッドミルのほうが優れています。

信頼できる運動能力測定

心臓病の治療目標のひとつに運動耐容能の改善ということが挙げられています。運動耐容能とは、どのくらいの運動ができるか、という能力です。運動耐容能が高い人は日常活動が活発で、いつまでも元気(不老)で長生き(長寿)できます。これは多くの研究で明らかにされていて、健康な人はもとより、心臓病の人にもよく当てはまります。

すべての心臓病の終末像は、心不全と呼ばれる多臓器不全状態または不整脈による死亡です。これらは運動耐容能が低い患者さんほど起こりやすいのです。心不全の人では、心臓のポンプ機能の善し悪しより、運動耐容能を調べるほうが、患者さんの予後を推測するのに役立ちます。心臓病の治療の評価に、運動耐容能を調べますが、正確に測定できるのが、心肺運動負荷試験(CPX)です。心肺運動負荷試験は、運動中の心臓と肺の機能を同時に測定する検査です。トレッドミルかエルゴメータを使い、呼気ガス分析用のマスクをして運動をします。運動中は心電図や血圧とともに、酸素の摂取量、炭酸ガスの排泄量、換気量などを測りす。

運動負荷心電図の情報に加えて、最大酸素摂取量などの運動耐容能や有酸素運動の上限であるAT (嫌気性代謝閾値) などの情報が得られます。これにより、心不全の重症度を判定できます。また、運動療法を行う際に、心臓に過剰な負担をかけずに安心して楽しめる運動強度などがわかります。4分間、安静時の心電図や酸素摂取量などを測定してから、運動を開始し、だんだん運動強度を増やしていきます。心電図変化や血圧異常がな.ければ、できるところまで続けます。
足が疲れるか、息切れが強くなるなどの症状が出たら中止します。試験の所要時間は30~50分程度です。マスクをつけても苦しくはありません。話すと呼気ガス分析データに影響します。とくに異常がない限り、黙ってふつうに呼吸をしながら検査を続けます。
運動後は6分間安静にして、心臓と肺の回復状況を調べます。一番がんばったところでの酸素摂取量を最大酸素摂取量といい、健康な人ばかりでなく、心臓病の人の生命予後の重要な指標になります。

心臓病の人では、最大酸素摂取量が3.5ml分/kg(1メッツ)増加すると、年間死亡率が12%ほど下がると言われています。

運動負荷テスト時の注意点

運動負荷心電図、運動負荷試験は、心臓に負担をかける検査ですから十分な注意が必要です。
検査室では、救急薬品や、いざというときのための電気ショック(直流除細動器) を用意しています。医師が立会い、とくに運動負荷試験の訓練を受けた臨床検査技師がようすを見ながら進めます。
ひざや足腰の弱い人は、事前に医師に伝えておきましょう。検査前には脈拍と血圧の測定を行います。体調がよくないときは、その旨を伝えてください。
途中で気分が悪くなったり、痛みが出たときには遠慮せずに、手を振るなど、あらかじめ指示された合図を送るようにします。前日は疲れが残らないよう、睡眠を十分にとります。食事は1時間前までに軽くすませます。極端な空腹、満腹はよくありません。たばこ、とくにお酒は厳禁です。上衣は電極をつけるので脱ぎ着がしやすいもの、下衣は運動用またはゆとりのある軽いズボン、ソックスを用意します。