2012年 11月 の投稿一覧

狭心症と心筋梗塞の異なる点

狭心症は虚血、心筋梗塞は元に戻らない

狭心症と心筋梗塞は、虚血性心臓病(心疾患)、冠動脈疾患とも呼ばれます。何らかの原因で、動脈の内腔が狭くなったり、詰まる、あるいは冠動脈壁がけいれんを起こして血流が妨げられ、心筋が虚血状態になったときに発症します。心筋にポンプ運動に見合う酸素が供給されず、酸欠状態から強烈な胸痛、いわゆる狭心痛が起こります。しかし、虚血性心臓病には無痛虚血性心臓病と呼ばれるものものあります。

病気の原因は同じですが、糖尿病の神経障害などで、胸痛などが出ないのです。症状がなくても、病気の重大性はまったく同じです。狭心症と心筋梗塞の違いをひとことでいえば、狭心症は、血液の通り道が狭くなり一時的に血流が低下したり、運動などで血流がたくさん必要なときに、血液の需要と供給のバランスが崩れた状態です。安静にしたり薬を飲むことで、心臓の要求に見合う血液量が回復すると発作は治まります。発作は1~10分くらいが多く、15分以上続くことはまずありません。一瞬チクリとする痛みは、狭心症でないことが多いのです。心筋梗塞とは、血管が詰まって血流が途絶えた状態です。詰まった先の血流が回復しないと、虚血状態になった心筋の部分が死んでしまいます(壊死)。その間に不整脈や心不全、ショックなどを引き起こし、大事に至ることも少なくありません。

血管内腔が狭くなる狭心症

虚血性心臓病の多くは、動脈硬化が基礎にあって発症します。動脈はいろいろな危険因子により炎症を起こし、厚く硬くなって弾力性を失っていきます。
かたよった食生活や運動不足などが続くと、血管の内壁にコレステロールなどがたまり、線維成分などとともにアテロームプラーク(以後プラークといいます) というもろい粥状のかたまりを作って沈着します。
プラークは血管壁の内膜でおおわれていますが、その外見はまるで水道管の内側の水あかのように盛り上がり、血液の通り道を狭くします。正常な冠動脈では、運動などで心臓が酸素をよけいに必要になると、血液量を増して心臓の要求に応えます。
しかし、冠動脈硬化が進んで狭くなった状態では、心臓がふだん以上の仕事をするときに酸素が足りなくなります。心筋は酸欠状態になつて、胸痛という悲鳴をあげるのです。それでも安静にしたり薬を使うことで、酸素の需要と供給のバランスが戻ると、発作は治まります。この状態を労作性狭心症といいます。
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血栓が血管を塞ぐ心筋梗塞

何らかのきっかけでプラークをおおう内膜が破れると、プラークの中身が血管内に露出します。これは異物なので、血液中の掃除屋であるマクロファージが集まってきます。そこに血小板が集まって傷口をかさぶたのようにおおって血栓(血液のかたまり)を作ります。
さらに赤血球もくっついて血栓は大きくなります。血栓はときには増大と溶解を繰り返して、あっという問に大きくなり、冠動脈を完全に塞いでしまうことがあります。
これが心筋梗塞です。血管がそれほど狭くなっていなくても、プラークが破裂してグズクズと広がれば、それだけで血管が塞がって、心筋への血流が途絶えてしまうこともあります。心筋梗塞は、運動やストレスなど心臓がいつも以上の酸素を必要とするときでなくても、発症することがあるのです。

その他の心臓検査

心臓核医学検査(RI)で虚血の部位を調べる

心臓核医学検査は医療用の放射性同位元素(RI=ラジオアイソトープ)を用いて、心臓の筋肉の状態や肺にたまった水の状態を調べる検査です。
RIを静脈から注射し、その流れや心臓への分布をガンマカメラで撮影します。使用するラジオアイソトープは微量で寿命の短いものですから、からだへの影響はほとんどありません。代表的なのは、心筋シンチィグラフィーです。ラジオアイソトープの種類によって、心筋梗塞の広がりをとらえたり、心筋障害の検出、心筋症の診断などに役立ち、心臓の交感神経の状態などを調べることもできます。
運動負荷検査を併用すると、運動時の心機能や虚血状態になっている場所を見つけることができます。

心シンチの受け方

当日の食事や薬については検査機関の指示を守ってください。貼り薬は検査の30分以上前にはがしておくのが一般的です。
運動負荷検査を併用する場合は、空腹、満腹を避けます。検査は外来で行い、所要時間は検査内容により異なります。
事前に問い合わせておくとよいでしょう。運動負荷検査を行う場合は、運動しやすい服装で受診してください。撮影は、原則として運動後と約4時間後の2回行います。1回日の撮影は1時間強、2回目は30分程度かかります。運動は最初の1回だけです。ラジオアイソトープは高価で保存が効かないため、都合が悪くなり検査を受けられない場合は、むだにならないように事前に連絡をしてください。

体表電位図

マッピング検査とも呼ばれ、ふつうの心電図検査より数多くの電極をつけ、心臓が発信する電気信号を余すところなく検査するものです。情報をコンピュータで解析しさまざまな心臓病の診断に役立てます。たとえば心筋梗塞は、その部位やひろがりが、より詳しくわかります。
不整脈の発生部位や原因を知ることもできます。一部の頻脈症では外科的治療やカテーテルアプレーションのためのデータにもなります。
検査には安静時心電図と同様、何の準備もいりません。ただし胸、背中を含め87か所に電極をつけるため、検査時問は電極をつける時間を含め、30~45分程度かかります。
胸毛は剃ることになります。

その他の心電図検査のいろいろ

心電図をコンピュータに取り込み、1拍ごとに微妙に異なる心拍数の変化を記録して、自律神経と心機能の関連を調べます。検査時問は15分程度です。

加賀平均心電図

心電図を重ね合わせて心臓の小さな電位を検出します。ふつうカテーテルを入れなければ記録できないヒス束の電位を記録したり、心筋の興奮の終了にバラツキがないかを見ることができます。これにより心室頻拍などの危険な不整脈が出やすい状態かどうかを調べます。検査時問は20~30分程度です。

QTディスパーション

ふつうの心電図と同じですが、記録スピードを変えてとります。心臓のいろいろな部分で心筋が興奮してから、元の状態に戻るまでの時間のずれを測り、心室頻拍などの危険な不整脈が出やすい状態かどうかを調べます。検査時問は5分程度です。

圧受容体反射検査

心臓の悪い患者さんは、健常の人に比べて、不整脈や突然死などの発生率が高く、その背景には自律神経の異常があるといわれています。圧受容体反射検査(BRS) では、心機能が低下している患者さんや心臓手術前後の患者さんの自律神経の状態を調べます。
リハビリテーション後の効果を判定するときに行うこともあります。検査ではフェニレフリンという血圧を上げる薬を注射して血圧を少しだけ上昇させます。
自律神経が正常であれば、血圧が上がると、すぐに心拍数が減るので、両者の関係を調べることで、自律神経の機能がわかるしくみです。血圧の変化を測定するには、トノメトリーという器械を手首につけます。装着に微妙な調節が必要で、15~20分程度かかります。検査中は安静にしています。血圧を上げますが、通常は自覚症状は出ず.安全性は確立されています。
ただし、ただ緑内障、甲状腺機能克進症、心房細動がある患者さん、
収縮期血圧が170MmHg以上の人は検査できません。

プレスモーグラフィー

心臓の機能が低下している息者さんは、一般に運動機能も低下しています。これには下肢の筋肉の血流や代謝、とくに血管の内皮機能などが大きく影響しているといわれます。
血圧測定の要領で太ももとふくらはぎにマンショエットを巻き、加圧して血流を止めます。その後、マンシュツトをゆるめ、虚血になっていた下肢にどのくらいの速度で血液が流れ込むかを調べます。強い加圧中は下肢に血液が流れなくなるため、はじめは少し痛みを感じます。我慢できないときは、からだを動かさず、担当者に口頭で伝えてください。検査時問は45分程度です。ふつうは用意された半ズボンに着替えます。足のしびれや長時間歩けなくなる閉塞性動脈硬化症の検査としても使います。
運動療法の前後に行い、下肢の血管の改善度を評価することもあります1また、下肢にむくみがあるとき、静脈機能を調べるためにも行います。このときはマンシェットを強く締めることはありません。検査前3時間は、強い運動や運動療法、たばこを避けてください。

四肢血圧測定で下肢閉塞動脈硬化症を見つける

下肢閉塞動脈硬化症は、高脂血症や高血圧、糖尿病などの生活習慣病があると発症しやすく、虚血性心臓病や脳卒中を起こしやすいといわれます。この検査は、足首と上腕の血圧からABIという指数を算出し、下肢閉塞動脈硬化症を早期に見つける検査です。動脈硬化の程度もわかります。
左右の手首、足首にマンシュツトを巻いて、同時に血圧を測り、胸に心音測定のマイクを取り付けます。血圧測定は2回、10分程度で終わります。準備は何もいりませんが、両腕と両足のふくらはぎに血圧計を巻きやすい服装で受診してください。

起立負荷試験で神経調節性失神を検査

失神、めまい、ふらつきは、脳や心臓の異常のほか、自律神経の失調でも起こります。Tilt検査といい、失神などが自律神経の異常によるものかどうかを調べます。心電図と血圧を測定しながら傾斜させた台に立ち、失神やその兆候が現れるかを調べます。
失神を起こしやすくするため、少量の血管拡張薬を点滴しながら傾斜台に立つこともあります。所要時間は45~90分程度。朝食は軽めにし、薬は医師に相談しましょう。

カテーテル検査でわかること受け方について

血管に細い管を入れて心臓まで通す

心臓カテーテル検査とは、柔らかい細い管(カテーテル) を腕または足の血管から心臓まで挿入し、圧力を測ったり、造影剤を入れて写真や映画を撮ったり、生検をするなど、さまざまな検査の総称です。
血管や心臓の内部から構造や動き、血圧、血流などを調べることで、狭心症や心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症などの診断を確定し、心不全の程度なども知ることができます。治療方針の判断材料となり、治療効果の判定にも使います。
心臓の詳しい検査を行う場合に、心臓カテーテルは必須です。

冠動脈造影

造影剤を注入して冠動脈を映し出します。狭心症や心筋梗塞などの虚血性心臓病の場合、冠動脈のどのあたりが詰まったか、その状態はどうかを調べます。

大動脈造影

解離性大動脈瘤、大動脈縮窄症などを調べます。大動脈弁閉鎖不全があると、血液が逆流して左心室が造影されます。

左室造影

左心室の庄を測定し、造影剤を注入して左心室内部を撮影します。心筋梗塞や心筋症では、左心室の壁運動が低下したり左心室の拡大が見られます。僧帽弁不全があると、本来映し出されない左心房が僧帽弁の逆流のために映ります。

右心カテーテル

柔らかいスワンガンツカテーテルがよく使われます。カテーテルの先端にバルーン(風船) をつけ、血液の流れに乗って静脈から右心房、右心室、肺動脈まで挿入します。肺動脈庄、右心室・右心房の圧、心拍出量を調べ、心不全の状能小や肺高血圧の状態を調べます。
また右心室から造影剤を注人すると、三尖弁閉鎖不全症や右心室の心筋症、肺動脈弁狭窄症なども診断できます。

電気生理学検査

略称はEPS。本の電極カテーテルを静脈から挿入し、心臓内の電気現象を分析したり、電気刺激を与えて心臓内の心電図を記録します。不整脈の診断と治療方針の決定に重要です。

心筋生検

心筋の病気が疑われるとき、カテーテルで心筋の一部を採取し病理検査をします。

カテーテル検査の注意点

心臓カテーテル検査はほとんど危険性のない検査ですが、出血を伴う検査なので完壁に安全とはいいきれません。
このため承諾書が必要です。検査は、局部麻酔で行い、カテーテルを、手首、肘、太もものつけ板のいずれかの血管に挿入します。
検査中に動惇などの異常を感じたら、からだを動かさずに、口頭で伝えます。
検査時間は個人差がありますが、おおよそ1時間です。カテーテルを抜いたあとは、圧迫止血をするだけです。
通常は血管切開や縫合をしないので抜糸はしません。検査後六~八時間は、止血のためにベッドでの安静が必要です。安静解除後、出血することがあり、そのときは再度圧迫止血をします。
内出血や痛みを感じる場合もありますが、通常は処置の必要はなく自然に消失します。退院は原則として、検査の翌日となります。一泊入院で行われる検査です。