6時間以内に治療できるかどうかが生死の分かれ目
緊張すると胸が苦しくなる、階段を上がると息切れがする、こんな症状が起こると、誰もが「心臓発作ではないか? 」と不安になります。実際、心臓病( 心疾患 )は、日本人の死因の第2位。そして、数ある心臓病の中でも、心筋梗塞や狭心症などの「虚血性心疾患(血流低下が原因の心臓病)」は、生命に危険を及ぼす率が非常に高いのです。
例えば、東京都内の突然死(発症後、24時間以内に急死すること)の件数は、5年間で1万8189件。そのうち、「心・血管系疾患病(心臓と血管にかかわる病気)」が原因の突然死は6割近くあり、さらに虚血性心疾患だけでも全体の4謝以上を占め、第1位でした。
心臓の筋肉( 心筋 )は、1日に約10万回も収縮と拡張をくり返し、全身に血液を循環させています。その心筋に酸素や栄養を供給している血管が、「冠(状)動脈」です。冠動脈に動脈硬化(動脈の老化)が起これば、血管の内膜に悪玉( LDL )コレステロールなどが入り込み、それが蓄積して プラーク ( 粥状の塊 )ができます。すると血管の内腔( 内側の空洞 )が狭くなって血流が悪化しますが、プラークが大きくなったり、血栓( 血液の塊 )ができたりすれば、内腔がさらに狭くなり、血管が詰まってきます。
このように、プラークや血栓のために血流が悪化し、一時的に心筋への血流が不足して起こるのが狭心症です。さらにプラークや血栓によって冠動脈の内腔が80% 以上狭まると、その先の血流が途絶え、心筋の一部が壊死してしまいます。これが、 心筋梗塞 です。狭心症が一時的な症状であるのに対し、心筋梗塞の場合はかなりの重症。このため、心筋梗塞を起こした人の25~30% は発作直後、あるいは病院に到着する前に命を落としているのが現状です。
心筋梗塞の発作では、非常に激しい胸の痛みや圧迫感が現れます。胸のほかにも首・背中・肩・腕に痛みを感じたり、冷や汗・吐きけ・呼吸困難・不安感を伴ったりする場合もあります。こうした症状が、30分~数時間にわたって続きます。また、全身に血液を送り出す心臓の力が弱くなって血圧が下がりすぎたり、心臓の働きが不規則になる心室細動という症状が起こったりします。どちらも命にかかわる危険な状態です。
心筋梗塞は、発作から6時間が勝負といわれ、6時間以内に専門的な治療を受けると救命率は上がってきます。発作が起こった場合には、一刻も早く救急車を呼ぶなどの対応が必要です。
ストレスをためやすいA型人間は要注意
心筋梗塞などの心臓病は、欧米では死因の第1位を占めている国が多いのに対し、日本では以前、罹患率も死亡者数もそれほど多くありませんでした。しかし、心臓病による死亡者数は1960(昭和35)年ごろから増えはじめ、いったんは減ったものの、1997(平成9)年ごろから再び急激に増加しているのです。
ところで、心筋梗塞などの虚血性心疾患を起こしやすくする危険因子があります。
主な危険因子としては、脂質異常症、高血圧、高血糖、肥満などがあげられます。また、メタポリックシンドロームに陥っている人やその危険性のある人は、動脈硬化がすでに進みはじめているため、心筋梗塞のリスクも高くなります。喫煙や過度のストレス、ほかの心臓病、痛風なども重大な危険因子です。
そして、心筋梗塞を起こしやすいとされている性格があります。それは「A型人間」と呼ばれている人の性格。
人は性格によって、A型人間とB型人間の2つのタイプに大別されます。A型人問は責任感が強く、目的に向かって自分を駆り立てていくタイプ。競争心も強く、仕事もドンドンこなしますが、ストレスがたまりやすいとされています。
一方のB型人問は、このような性格を持っていない人で、ストレスも少ないとされています。
ストレスは血管を収縮させ、心拍や血圧を上げる原因になるので、A型人間は心筋梗塞になりやすいのです。40代の働き盛りで心筋梗塞の発作を起こす人が増えていますが、これもストレスと人間関係が深いと考えられます。そこで、自分がA型人間かどうかを下の表でチェックしてみてください。判定でA型人間の可能性が大きい人は、ストレスをためこまない生活を心がけましょう。
A型人間診断
- 物事に夢中になりやすい
- 几帳面な性格
- 苦手なことにも挑戦する
- 1度決めたことは最後までやり通す
- 人がいやがることをよく引き受ける
- せっかちである
- いつも時間に追われている
- 1 度に2 つ以上のことをやることが多い
- じっとしているのが苦手
- 休日は家でゆっくりすることが少ない
- 旅行ではできるだけ多くの名所を回る
- 人に負けるのはいやだ
- 人からどう見られているか気になる
- 人よりもぜいたくな生活をしたい
- 相手の話し方が遅いとイライラする
- 早口
- 早食い
- 仕事や家事は熱心にやる
- 仕事や家事をやるのが速い
- 病気でも仕事をあまり休まない
- 遊ぶことより仕事のほうが好きだ
1~21個の中で12個以上該当した人は、ほぼ間違いなくA型人間といえます。心臓病を防ぐためにも、ストレスをためなしうに気をつけましょう。ただし、8 ~11個該当した人もA型人間の可能性があるので、十分に注意することが大切です。