
心臓の病気で 入院をすすめられる場合は、生命に危険が及ぶ可能性がある場合や、精密な検査・集中的な治療が必要な場合がほとんどです。以下に、入院が検討される主なケースと症状を挙げます。
入院をすすめるケース
医師が患者さんに入院を勧める理由には、だいたい次の4つがあります。
非常に高い
不安定狭心症や、発作を起こして救急車で運ばれた場合のほとんどは、これに該当します。いつたん発作が治まっても、引き続き医師の監視が必要な場合にも、医師は入院を勧めます。
外科手術、やカテーテル治療が必要
外科手術またはそれに準ずる治療で、1~2日を争うほど緊急性を必要としない場合は、患者さんの希望や家族の都合と病院側の体制を考慮して、入院期日を設定します。
入院の日数は回復の程度によって異なりますが、だんだん短くなってきています。一般的には、冠動脈バイパス手術、大動脈痛など大血管の手術、弁置換術などの手術は、3~6週間程度の入院です。カテーテルを使った治療は比較的からだへの負担が少なく、3~5日くらいの入院です。
(カテーテルでの治療は専門的には内科的治療に属しますが、患者さんにとっては手術のイメージが強いと思います。広い意味での手術として表記しています)。
検査入院
外来の検査では病状を判断しにくいときなどに、入院して検査をします。心臓痛の場合、代表的なのはカテーテルを使った検査です。この検査は心臓病の最終的な診断と治療方針の決定に欠かせません。最近ではほとんど事故は起こりませんが、細い管を血管内に挿入して検査をしますから、万が一の事態が起こらないとも限りません。
また検査後、半日くらいは医学的な管理が必要です。一泊程度の入院が必要です1いくつかの検査を合わせて行うことも多く、患者さんの体力や検査のうえでの効率を考えて入院を勧めることもあります。この場合は、1~2泊程度の入院が一般的です。
外来での治療がスムーズに進まない場合
外来での治療は、短時間の診察と問診、検査といった限られた情報で、治療方針を決定しています。発作が頻繁に起こったり、不整脈が強くて日常生活に支障をきたすなどといった場合には、入院により病状の変化を観察して治療法を決めていくことが必要な場合があります。
新しい薬に切り換える場合など、その効果と副作用をチェックして処方を決める必要があるときにも入院が勧められます。また、自宅では病気の管理が十分できない場合にも、一時的に入院を勧める場合があります1糖尿病の教育入院などもこれにあたります。
入院前に知っておきたい基礎知識
入院の際には医師や看護師から一定の説明があります。疑問点は遠慮なく質問してください。
入院中には、病状や治療方針の説明あるいはさまざまな連絡事項が出てきます。
家族などの関係者は、緊急時の連絡など、できるだけ窓口を一本化してスタッフとの連絡にあたることをお勧めします。
入院に際しては、入院中込書のほかに、健康保険証や老人医療証などが必要です。入院保証書が必要な場合もあります。病院によっては問診表を提出するところも多くなっています。
また、ふだんの生活のしかたなども含めた、こまかい問診がある場合もあります。
これは入院中の治療はもとより、退院後の生活指導のための貴重な資料となるので、ぜひ協力していただきたいと思います。
入院がすすめられる場合 まとめ
心臓病で入院が勧められる主なケースと症状
心臓の病気は多岐にわたりますが、特に以下のような状況では、入院による詳しい検査や治療が必要と判断されることが多いです。
1. 急性の症状や重症化している場合
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激しい胸痛: 突然の強い胸の痛みや締め付けられるような痛みは、心筋梗塞や急性大動脈解離といった命に関わる病気のサインである可能性が高く、緊急入院が必要です。痛みは背中に放散することもあります。
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息切れ・呼吸困難の悪化:
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安静にしていても息苦しい、少し動いただけでも激しい息切れがする。
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横になると息苦しくて眠れない(起座呼吸)。
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夜間に咳や痰が増える。
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これは心不全の症状が急速に悪化している可能性があり、肺に水が溜まっている(肺水腫)状態であれば、非常に危険なため緊急入院が必要です。
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意識障害・失神: 心臓のポンプ機能が著しく低下したり、重篤な不整脈が発生したりすると、脳への血流が一時的に途絶え、意識を失うことがあります。これは緊急性が高いため、即座の入院が必要です。
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脈の異常:
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極端な頻脈(脈が速すぎる): 動悸、胸痛、めまい、意識消失を伴う場合。
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極端な徐脈(脈が遅すぎる): めまい、ふらつき、意識消失を伴う場合。
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危険な不整脈は、心臓が正常に血液を送り出せなくなるため、入院して心電図モニターなどで状態を監視し、治療を行う必要があります。
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急激なむくみと体重増加: 足だけでなく、顔や手、お腹(腹水)にもむくみが急激に出現し、それに伴い体重も増加している場合は、心不全による体液貯留が疑われ、入院して利尿剤などで水分を排出する治療が必要になります。
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血圧の異常: 非常に高い血圧が続く場合や、急激な血圧低下(ショック症状)を伴う場合は、心臓に大きな負担がかかっているか、すでに重篤な状態に陥っている可能性があり、入院が必要です。
2. 精密検査や専門的な治療が必要な場合
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心臓カテーテル検査: 狭心症や心筋梗塞の診断や治療(ステント留置術など)のために行われる検査で、通常1泊2日程度の入院が必要です。
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不整脈のアブレーション治療: 薬でコントロールできない不整脈(心房細動など)に対して、カテーテルを用いて不整脈の原因となる心臓の部位を焼灼する治療で、数日〜1週間程度の入院が必要です。
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ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)の植込み: 脈が遅すぎる場合や、危険な不整脈がある場合に、これらを植え込む手術が必要となり、数日〜1週間程度の入院が必要です。
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心臓弁膜症の手術: 弁の機能が低下している場合、手術(弁置換術や弁形成術)が必要となり、入院期間は2〜3週間程度になることが多いです。
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心臓バイパス手術: 冠動脈の狭窄が複数ある場合などに行われる手術で、入院期間は数週間程度です。
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原因不明の症状の精査: 繰り返し起こる胸痛、動悸、息切れなどが心臓病によるものか詳しく調べる必要がある場合。
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心筋炎・心膜炎: 風邪症状の後に胸痛や息切れが出現し、心臓を包む膜に大量の液体が溜まっている場合など、心臓の炎症が疑われる場合も入院が必要です。心筋炎を合併していると心臓の動きが低下したり、不整脈が出現したりすることもあります。
入院を勧められたら
医師が入院を勧めるのは、患者さんの命を守るため、または現在の症状を改善し、将来の重篤な合併症を防ぐために必要だと判断した場合です。心臓の病気は急変することもあるため、入院を勧められた際には、医師の説明をよく聞き、指示に従うことが非常に重要です。
もし上記のような症状に当てはまる場合は、すぐに医療機関を受診してください。緊急性が高い場合は、迷わず救急車を呼ぶことも大切です。