心臓トラブルの経過

冠動脈硬化が進行すると血流が減る

心筋に新鮮な血液を供給する冠動脈は、安静時と運動時で血液の流量が異なります。運動などにより多量の血液が必要なときには、血管壁の平滑筋がゆるんで血管が拡張し、多量の血液が流れやすくなります。
血管は加齢により、老いていきます。なめらかだった血管壁の内皮は、年齢とともにザラザラとして、コレステロールがたまりやすくなり、血のかたまり(血栓)なども付着しやすくなります。
さらに動脈壁も硬く厚くなっていくため、血液の通り道はいっそう狭くなっていきます。
なお、この動脈硬化は、今では「老化現象」とされしかたのないものと思われていましたが、最近では「炎症」と考えられるようになり、今後は治療法が見つかるかもしれません。こうして血液の通り道が狭くなり、およそ75% 以上の狭窄になると、心筋に十分な酸素を供給できなくなることがあります。
冠動脈が狭くなると、心筋への血流が制限されます。安静にしているときは、心筋もそう多くの血液を必要としないため、血液の需要と供給のバランスが保たれていることが多いのですが、運動などで心筋が多量の酸素を必要とすると、血流量不足から心筋が酸素不足になります。これは、運動ばかりでなく、階段の昇降などでも起きます。
こうした状態を虚血といいます。早く歩いたり、階段を上ったりしたときに起こる労作性狭心症は、虚血性心臓病の一つで、酸素不足から胸が苦しく痛くなりますっさらに動脈が詰まってしまうと、血流が途絶えて心筋に酸素が運ばれず、心筋が死んでしまいます: この状態を心筋梗塞といい、強烈な胸の痛みが続きます。

心筋梗塞の発作は、運動がきっかけとは限りません。血管内の血栓がよどんで血液の通り道がふさがれてしまえばいつでも起こりうるのです。心筋梗塞を起こす前の冠動脈の状態は、6割以上が狭窄の程度が低い状態だったこともわかっています。

つまり冠動脈造影などの検査で狭いところが見つかっても、すぐには治療の対象とならない軽い病変が、突然に、完全閉塞を起こして心筋梗塞を発症することが多いのです。
この点は重要です虚血性心臓病の発作が起ころと、心筋の動きが悪くなり心臓のポンプ機能が低下します。急性心不全といい、強い発作の場合は、そのままポンプ機能が停止してしまうケースもあります。
心筋虚血が起こった場合によっては刺激伝達系が損傷して脈が乱れることもあります。ときに死を招くような不整脈を引き起こすこともあります。

冠動脈のけいれん

冠動脈の血流は、平滑筋の異常なけいれんによって流れにくくなることもあります。原因は自律神経の異常、あるいは、血管の一番内側にある内皮と呼ばれる一層の細胞が障害を受けて、起こると考えられています。
血管の内皮の細胞は、血管を拡張させたり収縮させる物質を放出して血管の緊張状態や太さをコントロールしています。
けいれんはスパスムといい、運動とは無か関係に狭心症の発作を起こします。特に夜中や明け方、寝ているときに起こる「異型狭心症」が有名です。

高血圧がポンプに負担をかける

高血圧があると、左心室が大動脈に血液を送り出すときに、それ以上の高い圧力を作る必要があります。したがって血圧が高いほど、心筋の負担は大きくなります。負担に打ち勝つため、心筋は厚く肥大します。心肥大を起こすと、心室の壁は進展しにくくなり、心房からの血流を受け取りにくくなる「拡張障害」という状態が起こります。
これは高齢者の心不全の原因の3分の1以上を占める重要な痛態です。肥大を起こした心筋は、よりいっそう酸素を必要とします。
しかし、酸素を供給する毛細血管はそう増えませんから、心筋はやがて酸欠状態になります。拡張障害や虚血が起こると、やがて心筋の収縮力が弱まり、ポンプの働きが低下することになります。
高血圧は動脈硬化の強力な危険因子となります。
冠動脈硬化のために、心筋への血流量が不足する例も少なくありません。また、高血圧と動脈硬化は、互いに影響し合って病状を悪化させます。

不整脈の危険性

心臓は血液を循環させるために、規則的に収縮と拡張を繰り返していますが、安静にしていても、動悸がしたり脱が乱れる状態を不整脈といいます。不整脈は心臓のポンプ作用に指令を与える電気系統のトラブルによって起こります。トラブルの原因としては、

  • 先天的なもの
  • 生活習慣の乱れ
  • 全身の病気
  • 心鹿の病気

などがあります。不整脈といっても、その種類はさまざまです。大まかに分けると、リズムが不規則になるタイプと、リズムは規則的だが脈拍が増える頻脆型、脈拍が少なくなる徐脈型があります。不整脈は、そのすべてが生命に関わるわけではなく、放置しても構わないものもたくさんあります。
反対に心臓のポンプ機能を低下させたり、停止させてしまうものもあります。
次は、命に大きく影響する不整脈のいくつかです。

心房細動

脈拍が速くなったり遅くなつたり、でたらめになるのは、心房細動です。心房での電気興奮が洞結節ではなく心房筋のあちこちで起こるため、心房が細かく震えるような状態になります。
その結果、心房は補助ポンプとしての働きがうまくいかないため、心臓全体のポンプ力も低下します。からだを動かすと心拍数が増加しやすく、動惇や息切れが起こりやすくなります。安静にしていても心拍数が速くなることがあり、高齢者では、長時間続くと心不全になることもあります。
心拍出量が低下し、心房壁が規則正しく収縮しないため、血液がうっ滞して血栓を作りやすくします。この血栓が全身に流れて脳そくの血管に詰まると、心原性脳塞栓を起こし、命に関わるにとなることもめずらしくありません。

心室頻拍・心室細

心室頻拍といって、突然、心室が興奮を繰り返し、毎分150~200回くらいの頻拍が続くと、心拍出量が極端に減って、失神することがあります。
心室細動では心室のあちこちで興奮が発生し、心室全体が細かく震え、ポンプ機能が失われます。電気的には興奮していても、ポンプとしては止まってしまった状態になります。
心室頻拍や心室細動は、心筋梗塞や心筋症、心臓弁膜症などで心筋の力が低下していると起こりやすく、原因がわからないこともあります。

弁膜症も機能低下

心臓弁膜症は、心臓の血液の逆流を防ぐ弁膜の開閉がうまくいかない状態です。心臓には4つの弁があります。いずれの弁でも、弁の開放が不十分になる「狭窄症」と、弁がぴったり閉じずに逆流を生じてしまう「閉鎖不全症」が起こります。その結果、血液の流れがスムーズにいかず、ポンプ機能が低下します。
心臓のポンプとしての働きは、さまざまな原因によって低下します。たとえば次のようなことが挙げられます。

心筋の収縮力の低

心筋の一部が壊死する心筋梗塞は、心臓全体としてのポンプカを低下させます。ほかに心筋症や心筋炎などでも心筋が弱くなります。

心拍数の異

心拍数が多過ぎると、心臓の拡張時間が短くなるため、心房から心室に十分な血液が流れ込まなくなります。結果として、大動脈へ送り込む血液量(一回拍出量) が減ってしまいます。
また、冠動脈から心室筋へ血液が供給されるのは心室筋が弛模している拡張期なので、拡張期問が短いと心筋への血流が減る場合があります。
心拍数が少な過ぎても、一定時間内に送り出す血液量は少なくなります。これらは心筋のエネルギー源を不足させることになります。

血液を送り出しにくい

これは心筋への負担を大きくします。高血圧、大動脈弁狭窄でも血液を送り出しにくくなります。

涜入する血液が多過ぎる

血流を調整する心臓への負担を大きくします。心臓弁膜症のために、弁が働かなくなっているときに起こります。腎不全や肝硬変で血管内の水の量が増えたり、甲状腺機能の異常などの場合もあります。

だるさやぢくみ、息切れ

心臓のポンプカが弱って、全身に血液を循環させるという心臓本来の働きがうまくいかない状態を心不全といいます。
血液が十分に行き渡らない臓器では、代謝活動が損なわれます。皮膚の色が悪くなり、全身がだるく、疲れやすくなります。血流が悪くなるため、むくんだり、息切れすることもあります。

慢性・急性

心不全には、慢性心不全と急性心不全があります。慢性心不全は、心臓のポンプカが慢性的に弱っている状態です。少しのきっかけで、急速に心機能が低下することがあります(慢性心不全の急性増悪)。急性心不全は、心筋梗塞など突然の心臓病で、ポンプカが急激に低下する状態です。激しい症状で死に至ることもあります。